旧辞(読み)キュウジ

デジタル大辞泉 「旧辞」の意味・読み・例文・類語

きゅう‐じ〔キウ‐〕【旧辞】

古い記録
日本古代の口承された神話伝説を記録したもの。古事記編纂へんさんの主要な資料。また、日本書紀編纂にも利用された。本辞ほんじくじ。→帝紀ていき

く‐じ【旧辞】

きゅうじ(旧辞)」に同じ。

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精選版 日本国語大辞典 「旧辞」の意味・読み・例文・類語

きゅう‐じキウ‥【旧辞】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 古いことば。昔の記録。
  2. [ 2 ] 上代の伝説、説話などを筆録したものとされるが、実態は不明。天武天皇ころ帝紀とともに、諸氏異本が多くあり、これらは「古事記」の資料として参考・利用されたと考えられる。また、「日本書紀」編纂の資料としても利用されたと見られる。本辞先代旧辞。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「旧辞」の意味・わかりやすい解説

旧辞
きゅうじ

「くじ」とも読み、「本辞(ほんじ)」「先代(せんだい)旧辞」ともいわれた(『古事記』序文)。帝紀(ていき)(帝皇日継(ていおうのひつぎ))とともに『古事記』編纂(へんさん)のための主要な資料となり、また『日本書紀』の編纂にも使われた古代の神話・伝承の記録。その内容は『古事記』の文から推すと、神代の諸伝説、歴代天皇の巻々の諸説話、歌物語の類があり、これを伝承の性格から分類すれば祭祀(さいし)、氏族、芸能の3種となるといわれる。もともと各氏族にはそれぞれの神話、伝承が伝えられていたが、5~6世紀のころ大和(やまと)王権の発展とこれに伴う国家自覚の成長を背景にして、大王を中心に各種旧辞の統合が図られ、統一的な政治構想をもつ記録がつくられたと考えられる。

[黛 弘道]

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百科事典マイペディア 「旧辞」の意味・わかりやすい解説

旧辞【きゅうじ】

《本辞》《先代旧辞(くじ)》《上古諸事(じょうこしょじ)》とも。大和(やまと)国家成立にともなう皇権確立の自覚から述作された神代の神話,歴代天皇時代の伝説・伝承,歌謡の類。6世紀前半の成立とされ,《帝紀》とともに《古事記》《日本書紀》編纂の史料とされた。諸氏族に伝えられ,多くの異本が存在したが,現在は伝わらず,内容は《古事記》などによって推測される。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「旧辞」の意味・わかりやすい解説

旧辞
きゅうじ

『旧事』とも書き,「くじ」とも読む。また『上古諸事』『先代旧事』『本辞』ともいわれる。天皇家の系譜的記事である『帝紀』とともに作成された書物。5~6世紀頃,大和朝廷が国家と民族の過去を顧みようとする歴史的自覚から作られたらしい。現在は伝えられず,『古事記』や『日本書紀』の編纂史料として吸収された記事 (因幡の白兎や海幸・山幸の話など) からその内容が推察される。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「旧辞」の解説

旧辞
きゅうじ

「古事記」編纂材料の一つ。同書序文は「本辞」「先代旧辞」とも記し,「帝紀(ていき)」と並んで登場する。内容については系譜的記事と考えられる「帝紀」部分を「古事記」から除いた,神話や説話といった物語的なものとみなす説が有力である。また神代巻であったとする見方もあるが,どちらも十分な根拠をもつものではない。成立年代も明らかではないが,大王権力の強化が図られた6世紀中頃とする説が有力。

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改訂新版 世界大百科事典 「旧辞」の意味・わかりやすい解説

旧辞 (きゅうじ)

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旺文社日本史事典 三訂版 「旧辞」の解説

旧辞
きゅうじ

古代の神話・伝承・歌謡などを記したわが国最初の歴史記録
『帝紀』とともに6世紀前半の成立とみられ,7世紀後半に天武天皇の勅により改修整理され記紀編纂の資料となった。

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世界大百科事典(旧版)内の旧辞の言及

【国記】より

…《日本書紀》の推古28年(620)条に〈天皇記及国記,臣・連・伴造・国造・百八十部幷公民等本記を録す〉とある。内容は不明だが,《古事記》の原史料となった《帝紀》《旧辞》のうちの《帝紀》に《天皇記》が相当するとすれば,《国記》は《旧辞》で,神代以来の物語の集成かという。《天皇記》《国記》は蘇我大臣家に伝わり,645年(大化1)大臣家が焼かれたとき,《国記》のみは船恵尺(ふなのえさか)が救いだして中大兄(なかのおおえ)皇子に献上したというが残っていない。…

【帝紀】より

…《古事記》中・下巻は,歴代天皇の系譜やおもな事跡に関する簡単な記録と,歌謡を含む物語部分からなるが,前者が帝紀,後者が旧辞を指すというのが通説である。《古事記》序文中に〈帝皇の日継,先代の旧辞〉などと,系譜と旧辞が対応するごとくに書かれているからである。…

【帝紀】より

…《古事記》中・下巻は,歴代天皇の系譜やおもな事跡に関する簡単な記録と,歌謡を含む物語部分からなるが,前者が帝紀,後者が旧辞を指すというのが通説である。《古事記》序文中に〈帝皇の日継,先代の旧辞〉などと,系譜と旧辞が対応するごとくに書かれているからである。…

※「旧辞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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