春と修羅(読み)ハルトシュラ

デジタル大辞泉 「春と修羅」の意味・読み・例文・類語

はるとしゅら【春と修羅】

宮沢賢治詩集。大正13年(1924)刊。宗教性と宇宙的感覚とが交響する世界を、独創的な語法でうたう。

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精選版 日本国語大辞典 「春と修羅」の意味・読み・例文・類語

はるとしゅら【春と修羅】

  1. 詩集。宮沢賢治作。大正一三年(一九二四)刊。詩型序文一、詩八章六九編を収録方言農民の日常会話を取り入れ、豊富な語彙でその独特の宇宙観、宗教観にもとづく詩的世界が展開されている。作者の生存中に刊行された唯一の詩集。死後さらに三集を続刊。

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改訂新版 世界大百科事典 「春と修羅」の意味・わかりやすい解説

春と修羅 (はるとしゅら)

宮沢賢治生前刊行した唯一の詩集。1924年(大正13)4月,関根書店刊。序詩につづいて《屈折率》(1922年1月6日)から《冬と銀河ステーション》(1923年12月10日)まで64編が日付(発想または第1稿成立の)順に収められている。前半の中心は,詩人が自らを憂悶する修羅と規定するパセティックな詩編《春と修羅》であり,後半は妹とし子の病死を素材として,詩の成立の根源にせまった痛切澄明な《永訣えいけつ)の朝》をはじめとする《無声慟哭(むせいどうこく)》詩群と,長大な挽歌詩群を中心としている。時間とともに変幻する心象を生鮮な語彙と音韻構造によって記録展開したこの詩集は,刊行時から一部の詩人に深い衝撃を与えた近代詩の記念碑的一冊である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「春と修羅」の意味・わかりやすい解説

春と修羅
はるとしゅら

宮沢賢治の唯一の生前刊行詩集。1924年(大正13)4月刊。「わたくしといふ現象は/仮定された有機交流電燈の/ひとつの青い照明です」と始まる「心象スケッチ」の手法の秘密にかかわる重要な序詩のほか、「屈折率」(1922.1.6)から「冬と銀河ステーション」(1923.12.10)まで64編が、発想または第一稿の日付順に収められている。その独創的な語法、鮮烈なポエジー、宇宙的感覚は、刊行当初は少数具眼の評家・詩人の注目をひいただけであったが、詩人没後、近代詩の記念碑的著作としての評価がしだいに定まった。妹の死を素材とした「永訣(えいけつ)の朝」以下の連作はよく知られている。

天沢退二郎

『『校本宮沢賢治全集2』(1973・筑摩書房)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「春と修羅」の意味・わかりやすい解説

春と修羅
はるとしゅら

宮沢賢治の詩集。 1924年発表。生前唯一の自選詩集で,大乗仏教の説く彼岸への憧憬と,現世の業にからみつかれた修羅としての自己の分裂が詩的感情の根底にひそみ,妹の死をうたう『永訣の朝』一連が最も有名。なお没後『春と修羅』第2,第3,第4が編まれ,それら全体をこの名で呼ぶこともある。

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