高村光太郎(こうたろう)の代表詩集の一つ。1941年(昭和16)8月、龍星閣(りゅうせいかく)刊。詩29編、短歌6首、散文3編を収めている。詩は、1912年(明治45)の「人に」から、40年の「梅酒」まで、智恵子に愛を告げる歌から、その没後10年を経て彼女を追憶する作までをほぼ編年体に並べて、さながら光太郎・智恵子夫妻の叙事詩集の趣(おもむき)となっている。ここで光太郎の目ざしたのは、智恵子が彼の目覚めであり、彼が智恵子の目覚めであるような、二身一体の愛と生命の賛美であり、自然法悦の賛嘆である。それだけに智恵子の狂気は痛ましく、彼女の死をめぐっての光太郎の慟哭(どうこく)は痛切である。いわゆる愛の詩集として、またヒューマンドキュメントとして、希有(けう)な位置を今日も保つ詩集である。版も幾度も重ねられた。
[安藤靖彦]
『『智恵子抄』(新潮文庫)』▽『草野心平編『高村光太郎と智恵子』(1959・筑摩書房)』▽『郷原宏著『詩人の妻 高村智恵子ノート』(1983・未来社)』
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…高村は智恵子を通じて善悪美醜の別を超えた生命の大いなる躍動と調和の世界を見たが,智恵子はやがて精神分裂病を発病,死に至る。《智恵子抄》(1941)はその至純にして悲劇的な愛の産物である。41年太平洋戦争勃発とともに,積極的な戦争詩の作者となり,青年への影響力も大きかった。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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