書入(読み)かきいれ

精選版 日本国語大辞典 「書入」の意味・読み・例文・類語

かき‐いれ【書入】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 書き入れること。書き加えること。また、その文字など。記入。かきこみ。
    1. [初出の実例]「墨けしあるひは書入等のおほく侍るは、草稿の書なればなり」(出典:俳諧・続猿蓑(1698)旅)
    2. 「伊藤東涯先生が自筆で細々と書入(カキイレ)をした見事なものがある」(出典福翁自伝(1899)〈福沢諭吉〉大阪修業)
  3. 売れ行き、利益、興味などの期待や予想。また、そういう期待のできるとき。かきいれどき。
    1. [初出の実例]「旅迎へこれ書入れの一つなり」(出典:雑俳・柳多留拾遺(1801)巻七)
  4. 江戸時代の抵当契約のこと。また、書入金。あるいは、抵当物件。質入れは契約期間中抵当物件を債権者に引き渡したのに対し、これは借金証文に抵当物件を書き入れるだけであったので、この名称が生まれた。これに対しては、原則として金公事(かねくじ)による保護しか与えられなかった。
    1. [初出の実例]「六郷彌右衛門居候宮内欠所家、しちやへかき入に致、銀三拾目かり候由」(出典:梅津政景日記‐慶長一七年(1612)八月六日)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「書入」の意味・わかりやすい解説

書入
かきいれ

近世、とくに江戸時代において金子(きんす)を借用するに際して、借金証文のなかに、債務者がその所有する動産不動産を記載すること。当該物件の占有が移転することのない点で質(しち)とは異なる。不動産の書入は江戸時代にはしばしば行われたが、債権者のために物権的効力を生じないから、債務不履行のために裁判沙汰(ざた)になった場合でも、債権者は無担保の貸金以上になんらの保護を与えられなかった。しかし、二重書入(ある人に書入をした家屋土地などをさらに他人に書入をすること)は禁止、処罰された。裁判上は債権者に対し特別の保護が与えられなかったが、特約をすることが行われた。普通のものは貸主借主との間で書入の効果につき、債務不履行の場合は書入の不動産を債権者に引き渡す旨の特約であったが、そのほか各種の特約もあった。

石井良助

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「書入」の意味・わかりやすい解説

書入
かきいれ

借用証文のなかに目的物品など抵当物を記載することによってなされた貸借契約方法。鎌倉時代以降,江戸時代を通じて行われ,書入には,動産,不動産,さらには人までが対象となった。債権者の権利は物権ではなく,書入金に関する訴えは普通の借金の訴えと同一に取扱われた。ただ二重書入は禁止されていたので,その範囲で債権者は保護されていたといえる。明治以降,民法の施行されるまで存続。 (→ )

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世界大百科事典(旧版)内の書入の言及

【地所質入書入規則】より

…この法令は,1872年田畑売買解禁の布告および地券交付によりすべての土地に私的土地所有権が付与されたのにともなって制定された。おもな内容として,(1)土地金融を質入(占有担保形態)と書入(非占有担保形態)に区分し,前者の場合には地券を金主に渡すことを義務づけ,(2)年季は3年以内に限定し,(3)書入では,土地に担保余力があれば,さらに2番,3番の書入を認め,(4)規則公布時に存在する質入・書入は,すべて規則に準じて73年7月までに改約する(のちに,前約の期間を据え置くことに改正)こととしていた。この規則の書入についての規定は,73年8月23日の太政官布告〈動産不動産書入金穀貸借規則〉で補強され,これにともない質入書入規則も,74年5月に一部改正された。…

※「書入」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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