改訂新版 世界大百科事典 「最適化制御」の意味・わかりやすい解説
最適化制御 (さいてきかせいぎょ)
optimization control
プラントやプロセスを最適な状態で運転することを最適化制御という。すなわち効率,利益率,生産量などの目的関数を最大にするようなプロセス変数の値を決定し実行することである。一般に制御対象であるプロセスの入力と出力の関係をプロセス方程式と呼び,これら制約条件のもとで目的関数を最大にすることを最適化という。特にプロセスの過渡状態の動的最適化を最適制御と呼び,定常状態の静的な最適化を最適化制御と呼んで区別する。通常,過渡状態は微分方程式で表現し,定常状態は代数方程式で表現する。それゆえ最適制御は,微分方程式系の初期状態を目標点に最短時間で移行したり,目標点との偏差を最小にするような入力(の時間的操作)を求めることである。他方,最適化制御は定常状態を表すプロセス方程式その他の制約条件のもとで,効率や利益などの目的関数を最大にするような入力と対応する出力の定常最適値を決定し,プロセスの所望の運転条件を規定する。さらに具体的にいえば,目的関数は(1)熱効率や生産コストを最適化するプロセスの運転条件,(2)各プラントの最適な資源配分や負荷配分や生産量などである。
ところでプロセス制御においてはつねに外乱が存在する。最適化制御では外乱変動の頻度が低いと仮定しているが,外乱やパラメーター,環境が変われば,運転条件を更新しなければならない。連続プロセスの最適化制御が生産の最適計画や化学装置の最適設計と違う点は,制御はオンラインで運転条件を計算し実行しなければならないことである。これが実際的な方法,手段を要するゆえんである。
最適化制御は一般に次のように定式化される。
目的関数 f(y,m,d)→最大
制約条件 h(y,m,d)=0,
g(y,m,d)≦0
ここでyは出力あるいは状態ベクトル,mは操作ベクトル,dは外乱ベクトルであり,fは目的関数,hはプロセス方程式,gは各種の不等式制約条件を表す。最適化制御を行うためには必ずしも数式モデルを必要としないが,少なくとも測定可能でなければならない。
数式モデルが未知の場合の最適化手法には,実験的な試行探索法であるオンライン山登り法などがある。試行探索法はmの大きさを試行的に変え,目的関数の増減から経験的に最適解に到達させる手法であるが,操業を乱したり,試行に時間がかかりすぎる欠点がある。しかし最適化制御は普通は数式モデルを用いて行われ,数理計画法を応用して効果的に最適解を計算できる。数理計画法は制約なしあるいは制約つき最適化問題として定式化される設計,計画,制御のための有力な手法で,勾配法,線形計画法,非線形計画法,動的計画法などがあり,最適解の満たすべき条件式やその数値計算法を与える。計算結果と実際の操業結果に差があれば,モデルが修正される。
さて最適化制御はオンラインの計算機制御によって実行される。そのためには計測と情報処理,最適化機能,調節機能などが必要であり,計算機の役目はプラントの最適な運転条件を決定し,それを実際に実現するための自動制御系の調節計の所望値(設定値)を与えることである。これはスーパーバイザリー計算機制御と呼ばれる2レベルの制御方式で実施されることが多い。高級な計算機制御の方式には,階層的計算機制御がある。そこでは機能,権限,情報の分散化が行われ,大規模系の決定・制御を実用的なものにしている。階層化された最適化システムにおいては,下位レベルの計算機群(制御ユニット群)が並列に稼働し,独立に部分システムの最適化問題を解き,上位レベルの計算機は全体的最適化を実行するために部分システムの行為を調整する。その結果,最適化制御のための多重レベル制御システムが構成される。近年,ハードウェア面でも多数の計算機の階層構成や計算機ネットワーク分散制御システムなどが普及し,高度な制御目的が追求されている。
執筆者:志水 清孝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報