月経前緊張症(読み)ゲッケイゼンキンチョウショウ(その他表記)Premenstrual syndrome

デジタル大辞泉 「月経前緊張症」の意味・読み・例文・類語

げっけいぜん‐きんちょうしょう〔‐キンチヤウシヤウ〕【月経前緊張症】

premenstrual tension》⇒ピー‐エム‐エス(PMS)

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

六訂版 家庭医学大全科 「月経前緊張症」の解説

月経前緊張症(月経前症候群)
げっけいぜんきんちょうしょう(げっけいぜんしょうこうぐん)
Premenstrual syndrome
(女性の病気と妊娠・出産)

どんな病気か

 月経前3~10日の間続く精神的あるいは身体的症状で、月経が始まるとともに減ったり消えたりするものをいいます。

原因は何か

 原因にはさまざまな説がありますが、不明です。考えられている説として、卵巣ステロイドホルモンに対する標的器官(ホルモンの影響を受ける器官)の感受性の差が原因であるとするもの、水分貯留症状や低血糖類似症状からレニン・アンジオテンシン系の異常、耐糖能の異常があるとするもの、セロトニンなどの神経伝達物質の異常分泌があるとするものなどがあります。

症状の現れ方

 症状は月経前に周期的に現れ、身体症状としてはむくみや腹部の膨満感(ぼうまんかん)、乳房の緊満感(きんまんかん)などの水分貯留症状のほか、頭痛、腹痛、腰痛などの疼痛症状、食欲不振、めまい倦怠感(けんたいかん)などの自律神経症状、情緒不安定抑うつ、不安、睡眠障害などの神経症状があります。

 ただし、症状の現れ方には変化があり、月によって程度が異なることも少なくありません。

検査と診断

 さまざまな身体的、精神的症状などを記録することにより、現れた時期、周期性などを評価して診断します。排卵周期との関係を検討するために、基礎体温も同時につけておくとよいでしょう。

治療の方法

 薬物療法非薬物療法があります。

 薬物療法は対症療法ホルモン療法、向精神薬に分類されます。対症療法としては利尿薬鎮痛薬などが用いられます。ホルモン療法としては低用量ピルを用いることがあります。向精神薬としては従来マイナートランキライザー(精神安定薬)などが用いられましたが、現在ではSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬。抗うつ薬の一種)が第一選択となっており、黄体期(おうたいき)だけの投与でも十分効果がみられることがあります。漢方薬が有効なこともあり、試してみる価値があります。

 非薬物療法としては、症状を調査して、その成り立ちをよく理解し、食事、運動、リラクゼーションなどにより生活習慣を改善します。

病気に気づいたらどうする

 本疾患に当てはまるような症状が月経前に繰り返して現れるようなら、婦人科を受診するのがよいでしょう。できれば、月経の時期と症状が現れた時期をおおまかにでもメモして受診すれば、診断に役立ちます。

大須賀 穣

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「月経前緊張症」の解説

げっけいぜんきんちょうしょう【月経前緊張症 Premenstrual Tension】

[どんな病気か]
 月経の3~10日前から、さまざまな精神的、身体的な症状がおこり、月経開始とともに症状が消える状態をいいます。
 代表的な症状は、下腹部痛、腰痛、浮腫(ふしゅ)(むくみ)、乳房緊満(乳房が張った感じになること)、便秘、下痢(げり)、吐(は)き気(け)、精神状態の変化(いらいら、怒りっぽい、憂うつ)などです。
[原因]
 黄体期(おうたいき)(排卵(はいらん)後の黄体ホルモンが分泌(ぶんぴつ)されている時期)における、ホルモン分泌不全が原因と考えられていますが、はっきりとした原因は不明です。精神的要素も重要な因子であると考えられています。
[検査]
 月経開始と同時に症状が改善するので、問診のみで月経前緊張症を疑うことはできますが、子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)(「子宮筋腫」)、子宮内膜症(しきゅうないまくしょう)(「子宮内膜症」)、卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)(「卵巣嚢腫」)の有無を確認するために、内診、超音波検査を行なうのが一般的です。
[治療]
 ふつう、薬による治療が行なわれ、ホルモン治療としてエストロゲンと黄体ホルモンの合剤を使用することが多いようです。
 漢方薬を使用したり、ホルモンバランスを整えるために排卵誘発剤を使用することもあります。
 むくみが強い場合には、利尿薬の使用や、利尿効果のある漢方薬を使用することがあり、また、精神状態の改善のために抗不安薬を使用することもあります。
[日常生活の注意]
 精神的な因子が強い場合もあるので、必要以上に体調の細かな部分まで気にかけず、仕事、趣味など集中できるものをもつこともだいじです。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「月経前緊張症」の意味・わかりやすい解説

月経前緊張症
げっけいぜんきんちょうしょう
premenstrual tension

月経開始の 10日ほど前から体重増加,浮腫,頭痛,神経過敏,全身違和感,下腹部膨満感などを訴え,月経開始とともに症状が消失する症候群をいう。主として黄体ホルモンの影響による水分の貯留が原因と考えられるが,詳細は不明である。利尿剤,トランキライザ,ホルモン剤などの投与が有効のことが多い。

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世界大百科事典(旧版)内の月経前緊張症の言及

【月経前症候群】より

…月経前の症状が異常に強い場合で,月経前7~10日から出現し,月経開始とともに消失する。月経前緊張症premenstrual tensionともいわれる。月経前には,一般の健康人でも,月経開始数日前から種々な症状,すなわち軽度の違和感,精神神経過敏,下腹部や腰部の重圧感や不快感がある程度みられるが,日常生活に支障をきたすくらい症状が強い場合は病的で,月経前症候群である。…

※「月経前緊張症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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