江戸中期以後の検見の一種。田畑の上・中・下の位,石盛やそれに対応する根取米に関係なく,実収によって年貢を決定する方法(幕領では五合摺,五公五民)。検見に先立ち村役人と地主が一筆ごとに,1坪に何合毛と見立てて内見合付帳に記し,有合毛ごとに段別を寄せて籾高を算出する。たとえば〈籾一升毛の田一段歩この籾三石,九合毛の田五段歩この籾十三石五斗〉などと記載し,それらを合計して〈毛付反別五町五段歩この内見籾百二石三斗〉と記して代官に提出する。代官は同帳にたとえば籾一升・九合・八合・七合・六合・五合・四合毛それぞれ何段歩と書き出されたもののうち,上の一升毛,中の七合毛,下の四合毛の3ヵ所で坪刈りし,3口の平均から取米を算出する。有毛検見はすでに享保年中(1716-36)に施行されていたが,幕領で一般に実施されたのは1749年(寛延2)からである。ただし畿内・中国筋では,1744年(延享1)から田方木綿・雑事勝手作法とあわせ施行された。従来の石高制に基づく畝引(せびき)検見に代わって,有毛検見が採用されたのは,(1)検地当時の位・石盛が現実にそぐわなくなった,(2)検地帳が紛失して位・石盛がわからなくなった,(3)租率を固定していても,位・石盛に拘束されないので,生産力の変化発展に,そのつど対応できること,などによる。これが幕府で施行されると,三卿はもちろん各藩や旗本の多くはこれにならった。有毛検見取はまた色取検見とも呼ばれるが,後者は位・石盛に基づき,また租率を固定していない点で,前者とまったく異なる。すなわち江戸前期に幕領(藩によっては元禄ごろまで)で施行された色取検見は,上・中・下田の位にかかわらず,作柄に応じて上・上中・中・中下・下・下々毛などに分け,たとえば上・中・下田の作柄のうち上毛と認定された分は,上・中・下田それぞれの分米に換算,合計され,それに上毛に相応する租率を乗じて年貢を算出する方法である。
執筆者:森 杉夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
江戸時代の検見の一種。田畑の上中下の等級や石盛(こくもり),根取米(ねどりまい)などを無視し,実際の収量に応じて年貢の額を決定する方法。検見に先立って,まず村方で坪刈をし,田方一筆ごとに現実の収穫に応じた有籾量を算出して,これらの段別を集計した内見合付(ないみごうつけ)帳を代官に提出する。これに検見による坪刈で算出した刈出籾を加味して村全体の籾収穫量を決定する。生産力の上昇分を確実に把握することができるため,幕領では勘定奉行神尾春央(かんおはるひで)によって,1749年(寛延2)からとくに畿内の綿作地域の農村で採用された。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
江戸時代の検見法の一つ。田畑の等級や石盛(こくもり)を無視し、一筆ごとの坪刈りを行い、実際の収穫量から年貢量を決定する。享保(きょうほう)の改革の年貢増徴策の一環として実施された。
[編集部]
…翌年勘定奉行に昇進し,同年勝手掛老中に就任した松平乗邑(のりさと)の下で年貢増徴につとめた。44年(延享1)みずから畿内・中国筋を巡察し,有毛検見(ありげけみ)取法と田方木綿・雑事勝手作法を施行して年貢を増徴した。そのさい神尾は,ふらちな者は5000人,7000人でも死罪以下の重罪に処すと,あらかじめ百姓の抵抗をくじき,ついで〈法は人間よりも重く,法の次は人,穀類抔(など)よりは人間は大切,其大切よりも法は重く候〉と,権力の発現たる法を人間に優先させ,〈胡麻の油と百姓は絞れば絞るほど出るもの〉という,徹底した増徴主義の論理を告げた。…
…これによって領主は歳入が安定するうえ,検見費用を節減できたし,農民は増収分を自己のものとして蓄積する可能性が開けた。さらに綿作など高度な商品作物の展開に対応すべく,18世紀中葉には有毛検見(ありげけみ)法が採用された。生産力の増大によって,検地による石高が実情に合わない場合,畝引検見では有効に対処できないが,有毛検見法は検地高によらず実情に即して生産高を把握したので,年貢高を大幅に増すことができた。…
※「有毛検見」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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