洋画家。明治26年8月21日、東京・日本橋に生まれる。父木村荘平は明治中期に牛鍋屋(ぎゅうなべや)「いろは」を創業した当主で、弟に作家木村荘十(そうじゅう)、映画監督木村荘十二(そとじ)がいる。京華中学校を卒業後、暁星中学仏語講座に籍を置き、文学を志し、演劇に関心をもつ。葵橋(あおいばし)洋画研究所に入って岸田劉生(りゅうせい)を知り、1912年(大正1)フュウザン会の結成に加わり『虎の門(とらのもん)付近』など革新的なフォーブ風作品を発表した。また当時から文筆の才に優れ、批評や多くの西洋美術書の翻訳を始めている。15年劉生、中川一政(かずまさ)らと草土社を創立し、毎年展覧会を開いて独特な写実様式に進んだ。18年院展洋画部に出品して樗牛(ちょぎゅう)賞を受賞。22年春陽会の創立には客員として参加、のち中心的な会員として活躍した。昭和初期の代表的作品『パンの会』『牛肉店帳場』などは春陽展に発表。油絵のほか、『にごりえ』『霧笛(むてき)』『濹東綺譚(ぼくとうきたん)』などの挿絵にも優れた仕事を残し、また、『風俗帳』『現代挿絵考』『東京今昔帳』など随筆も多く刊行した。没後の59年(昭和34)に遺著『東京繁昌記(はんじょうき)』の文と絵に対して日本芸術院恩賜賞が贈られた。演劇や映画の時代考証、小唄(こうた)や邦楽の権威でもあり、書籍の装丁にも優れていた。昭和33年11月18日没。
[小倉忠夫]
『『木村荘八全集』全8巻(1982~83・講談社)』
大正・昭和期の洋画家,随筆家
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洋画家。東京に生まれる。父の荘平は牛肉店〈いろは〉の盛業で知られ,姉の曙は小説家,兄荘太は文芸評論家。弟の荘十は小説家,荘十二は映画監督。白馬会洋画研究所に学び,岸田劉生を知り,ともに1912年フュウザン会の結成に参加。《エル・グレコ》《未来派及立体派の芸術》などを翻訳出版し,後期印象派以後の新美術の紹介にも尽力した。フュウザン会解散後,岸田劉生,高村光太郎らと生活社を起こし,15年岸田,中川一政らと草土社を結成,二科会,日本美術院洋画部にも出品。22年草土社を解散し,新結成の春陽会に招かれ,以後会員として活躍。代表作は《パンの会》《牛肉店帳場》など。また《にごりえ》《濹東綺譚》など小説挿絵にもすぐれた作品を残した。邦楽評論家としても知られ,随筆家としても著名で《東京繁昌記》の画文は59年日本芸術院恩賜賞を受けた。《木村荘八全集》全8巻がある。
執筆者:匠 秀夫
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