木遣り(読み)キヤリ

デジタル大辞泉 「木遣り」の意味・読み・例文・類語

き‐やり【木遣り】

重い木材や岩などを、多人数で声を掛けたりしながら運ぶこと。また、それをする人。
木遣り歌」の略。

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改訂新版 世界大百科事典 「木遣り」の意味・わかりやすい解説

木遣り (きやり)

木遣り歌とも。大木や石を大勢で引いて行くときにうたう歌。家を建てるため柱となる木を切り出して引いてくるとき,音頭取り材木の上に上ったりしてうたった歌が,字義どおり木遣りであるが,祝儀歌としても民謡の中に定着して今日に及んでいる。建築儀礼などにうたわれ,江戸木遣りなどのように美声の鳶(とび)職に伝承され,棟上げやさらに祭礼の練歌(ねりうた)に転用して使われている。《伊勢音頭》なども,伊勢神宮の20年ごとの遷宮に切り出した材木を運ぶときの木遣り歌に端を発しており,今も全国に分布する《伊勢音頭》およびその系譜の歌のもつはやしことば〈ヤートコセーノヨーイヤナ〉は木遣りの際のはやしことばであった。長野県諏訪の,7年めごとに行われる上社・下社の御柱祭(おんばしらまつり)は,山から切り出した御神木を数千人の氏子が引いてきて,両社の社地に建てる神事であるが,その際にうたわれるのが〈木遣り歌〉で,こういう形が木遣り歌の原形といえる。
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百科事典マイペディア 「木遣り」の意味・わかりやすい解説

木遣り【きやり】

日本民謡一種。〈木遣歌〉の略。本来は神社造営の神木などの建築用木材をおおぜいで運ぶときの労作歌だが,その他の建築資材を運ぶとき,土突きなどの建築工事や祭の山車(だし)を引くときなどの歌も含まれる。音頭取りの独唱とおおぜいの人の斉唱が掛合いで入る音頭形式で,テンポがおそい。仕事歌としてより祝儀歌として歌われることもあり,三味線歌にもなっている。
→関連項目音頭手古舞

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「木遣り」の解説

木遣り
(通称)
きやり

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
全盛操花車
初演
寛政9.8(江戸・河原崎座)

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世界大百科事典(旧版)内の木遣りの言及

【沖縄[県]】より

…いずれも,もとは単に〈うた〉とよばれたものであるが,沖縄の〈うた〉が琉歌といわれるようになったのは,日本の和歌が,漢詩(からうた)に対して和歌(やまとうた)と称して区別されるようになったのと同じ事情であり,地域的変容と特性をもっている。琉歌は〈短歌形式〉〈長歌形式〉に二分し,前者は〈短歌〉〈仲風(なかふう)〉に,後者は〈長歌〉〈つらね〉〈木遣り〉〈口説(くどき)〉に分けることができる。短歌は8・8・8・6の4句30音から成る定型の短い文学形式で,普通に〈琉歌〉というときにはこれを指す。…

※「木遣り」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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