寄留(読み)キリュウ

デジタル大辞泉 「寄留」の意味・読み・例文・類語

き‐りゅう〔‐リウ〕【寄留】

[名](スル)
一時的に他の土地または他人の家に住むこと。「知人宅に寄留する」
寄留法で、本籍地以外の一定場所に90日以上住所または居所を持つこと。昭和26年(1951)住民登録法の制定にともない廃止
[類語](1寄宿下宿居候寄食寄寓食客ホームステイ住み込み

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精選版 日本国語大辞典 「寄留」の意味・読み・例文・類語

き‐りゅう‥リウ【寄留】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 他郷または他家に、一時的に身を寄せること。かりずまい。寓宿仮寓
    1. [初出の実例]「今秋中東京府下寄留(キリウ)の人員官(かみ)より御調べ有しに」(出典:新聞雑誌‐一八号・明治四年(1871)一〇月)
  3. 旧制で、九〇日以上、本籍地以外の一定の場所に住所、または居所をもつこと。昭和二七年(一九五二)に廃止された寄留法にもとづくもので、現在では住民登録制度になった。
    1. [初出の実例]「他府県又は他郡市区他町村より寄留したるの届出あるときは入寄留簿に登記すべし」(出典:内務省令第二二号‐明治一九年(1886)一〇月一六日)

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改訂新版 世界大百科事典 「寄留」の意味・わかりやすい解説

寄留 (きりゅう)

住民登録制度ができる前の制度で,本籍以外の一定の場所において,90日以上住所または居所をもつこと。1914年の寄留法および寄留手続令によれば,寄留事務は市町村長が管掌し,関係事項は寄留者本人の届出,または市町村長の職権により,寄留簿に世帯単位として記載された。寄留制度は,はじめ1871年(明治4)の戸籍法に規定された。そこでは,寄留は,公私の用により一時的に本籍を離れるものであり,ただ旅行と違うのは90日以上の長期にわたることであった。しかし人口の流動化の進行に伴い,本籍を離れる人口が増加すると,寄留の重要性も増大し,とくに86年の二つの内務省令(出生死去出入等届出方及寄留者届出方,戸籍取扱手続)によって寄留制度の整備がなされた。そのため,民法の付属法令として98年の戸籍法が制定されたときも,それは,寄留については,従来どおり1871年の戸籍法および86年の二つの内務省令によるものとした。しかし,日露戦争後の日本社会の発展は,より整備された寄留制度を要求したので,前述の1914年の寄留法と寄留手続令が制定された。さらに第2次大戦における総動員体制は,物資の配給制度等の実施のため,世帯のより正確な把握を必要としたので,40年ころから市町村は世帯台帳を作成するに至った。51年の住民登録法は,これを法制化し,寄留法を廃止した。さらに住民登録法は,67年の住民基本台帳法によって代えられた。しかし,今なお,住民基本台帳(〈住民票〉の項参照)への登録を,寄留と俗称する人もある。
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百科事典マイペディア 「寄留」の意味・わかりやすい解説

寄留【きりゅう】

寄留法(1914年公布,1915年施行)に基づき,本籍以外の一定の場所に90日以上住所または居所をもつこと。寄留者は,寄留地の届出義務をもち,寄留者に対する財産上の訴えは寄留地の裁判所に提起できた。主として都市部への労働力の流入に対応するための制度であった。1952年この制度は住民登録法(1951年公布,1952年施行)制定時に廃止。→住民基本台帳

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普及版 字通 「寄留」の読み・字形・画数・意味

【寄留】きりゆう

寄寓する。

字通「寄」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の寄留の言及

【戸籍】より

…これに対して,府藩県全体を通じて,全国的に統一的な戸籍制度を確立したのが,71年4月4日の戸籍法(太政官布告)である。これは民部省(のち大蔵省をへて内務省)の管轄下にあり,前文,本文全33則,および各種書式(戸籍表式,職分表式,寄留人届書,戸籍書式)から成る。その特質は,中央集権的な戸籍事務機構をもって,全国民を〈戸〉において一元的に把握した点にある。…

【住民票】より

…また後者は,(1)選挙人名簿の登録(選挙権は住民票所在地で行使される),(2)国民健康保険・国民年金の被保険者の資格,(3)児童手当の受給資格,(4)米穀類の消費者の資格,である(7条)。 ところで本籍以外の一定の場所で,90日以上住所または居所をもつことは,かつては〈寄留〉と呼ばれてきた。1914年の寄留法を廃止して51年に制定された住民登録法の施行下では,国民健康保険,国民年金,食糧配給に関する届出など住民の届出に関する制度は,各種の行政ごとに個々に定められていた。…

【世帯】より

… 大正期に入ると,行政の側からの世帯概念の明確化がいっそう進展する。〈寄留手続令〉(1914公布)は寄留簿を〈世帯ヲ同クスル者ニ付テハ世帯毎ニ区別シテ編製〉することと規定し,世帯主には寄留に関する届出義務を課すことにしている。これは,寄留簿に記載される現実の生活共同体を把握するため,行政手続用語として世帯を導入したのであり,新しい世帯概念が国の法令条文中に登場した最初のものといえる。…

※「寄留」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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