東大寺要録(読み)とうだいじようろく

精選版 日本国語大辞典 「東大寺要録」の意味・読み・例文・類語

とうだいじようろく ‥エウロク【東大寺要録】

平安後期の仏書史書。一〇巻。嘉承元年(一一〇六成立東大寺古記録を集め一〇章に分類編集したもの。長承三年(一一三四)観厳らが再編したものが伝存奈良平安時代の東大寺の沿革だけでなく古代の仏教史や社会経済史についての重要史料

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「東大寺要録」の意味・わかりやすい解説

東大寺要録
とうだいじようろく

平安院政期につくられた東大寺の寺誌。東大寺寺僧がその興隆を願い、1106年(嘉承1)編集したと序文にある。その後、さらに増補再編がなされたもようで、奥書から1134年(長承3)には東大寺観厳が編集したことがわかる。本願縁起・供養・諸院・諸会・諸宗別当・封戸水田・末寺・雑事という項目で構成され、全10巻10章からなっている。東大寺についての枢要な事項を、当時伝来していた古文書や古記録をもとにまとめたもので、本書は寺僧にとって一種の規範としての役割ももったであろう。東大寺史のみならず、古代~院政期の政治・経済・社会・文化など幅広い分野にわたっての研究史料としてもきわめて重要な内容をもつ。また本書には『延暦僧録』の逸文など、現存しない貴重史料も含まれている。1241年(仁治2)の古写本2冊が醍醐寺に、1485年(文明17)の写本が東大寺に存す。いずれも国指定重要文化財。刊本としては筒井英俊校訂『東大寺要録』(1971・国書刊行会)、『続々群書類従』、『大日本仏教全書』などがある。

[久野修義]

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改訂新版 世界大百科事典 「東大寺要録」の意味・わかりやすい解説

東大寺要録 (とうだいじようろく)

全10巻。本願章,縁起章,供養章,諸院章,諸会章,諸宗章,別当章,封戸(ふこ)水田章,末寺(まつじ)章,雑事章の10章から成る。序文によれば1106年(嘉承1)の編纂であるが,34年(長承3)に観厳によって増補され,さらにその後も追加増補された。多くの史料が引用され,奈良・平安期の東大寺の組織,年中行事,寺領荘園,末寺等を知る上での基本文献。《続々群書類従》所収。
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「東大寺要録」の解説

東大寺要録
とうだいじようろく

院政期に成立した東大寺の寺誌。編者不明。1106年(嘉承元)成立。はじめは本願章・縁起章など10巻10章であったが,34年(長承3)東大寺僧観厳(かんげん)により増補された。編纂の動機は平安後期に至り東大寺が衰退したため,その復興を願い,東大寺に関する諸史料を集め,同寺の歴史およびその正当性を主張することにあった。奈良・平安時代の他にみられない史料を多く引用しているため,東大寺の歴史だけでなく古代史の重要な史料。東大寺および醍醐寺が古写本を所蔵(ともに重文)。刊本は筒井英俊校訂本など。

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百科事典マイペディア 「東大寺要録」の意味・わかりやすい解説

東大寺要録【とうだいじようろく】

奈良東大寺関係の史料集。全10巻。序文によると1106年の成立であるが,1134年に増補され,その後も追加増補が加えられている。縁起・諸院・別当・末寺など幅広い史料が引用されており,東大寺の寺院組織や年中行事,寺領の荘園などの実態が知られる好史料。

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日本歴史地名大系 「東大寺要録」の解説

東大寺要録
とうだいじようろく

筒井英俊編 全国書房 昭和一九年刊ほか

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