改訂新版 世界大百科事典 「松下電器産業」の意味・わかりやすい解説
松下電器産業[株] (まつしたでんきさんぎょう)
日本を代表する世界的家電メーカー。松下グループの中心企業。〈ナショナル〉のブランドで著名。本社,大阪府門真市。1918年,松下幸之助により家庭用電気器具の生産・販売を目的として個人創業された松下電気器具製作所に始まる。生産品目は当初のアタッチメントプラグ,2灯用差込みプラグなどの配線器具類から,アイロン,暖房器具等へと漸次拡大し,29年に社名を松下電器製作所と改称。31年にはラジオ,乾電池の生産にも着手した。33年組織を事業部制とし,事業の専門細分化による独立採算の体制を採用した。以来今日までこの体制は伝統的に受け継がれてきている。35年改組し,松下電器産業(株)を設立,同時に各事業部門を分離独立させ,既存の松下電器貿易(株)等3社を併せ9分社を傘下におく統轄会社として新発足した。その後,電球事業等の分野にも進出し,第2次大戦下,民需生産を続ける一方で,各種無線機器等の軍需生産にも着手した。なお,44年分社であった松下無線(株)等4社を本社に吸収合併,組織の改革を行い,本社直轄の6製造所体制とした。
第2次大戦後は占領政策による諸種の経済民主令による制限を受け,再建は困難を極めたが,伝統の事業部制等により比較的早期に業績の回復に成功し,洗濯機,テレビ,冷蔵庫に至る幅広い商品をつぎつぎに開発した。以降,家電メーカーとしてトップの地位を維持している。52年にはオランダのフィリップス社と技術提携し,半導体生産の松下電子工業(株)を設立した。
55年ころから事業活動は本格化し,多角化,技術革新による数多くの新製品の開発,高水準の新鋭工場の建設などにより,業績は飛躍的に向上した。一方,海外活動も本格化し,59年アメリカ松下電器(株)の設立に続き,ヨーロッパ,中南米等に相次いで進出を果たしている。80年代の柱となったVTRにかわり90年代には情報関連機器の開発体制を強化し,情報分野への積極的参入を図る一方,日立製作所等に比べ出遅れていた半導体部門にグループの総力をあげて取り組んでいる。資本金2587億円(2005年9月),売上高8兆7136億円(2005年3月期)。なお2008年10月に社名をパナソニック(株)に変更した。
執筆者:古矢 真義
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報