近代鉱工業の発達過程で,ある企業の発展とともに都市が形成されたことによって,その企業が地域社会に対して政治的,経済的,社会的に大きな影響力をもっている都市をいう。封建領主が居城を構えた地域に,家臣団をはじめとして商家・職人が集住して城下町ができあがったことと類比した言葉であり,英語ではcompany town(会社町)と呼ばれる。たとえばアメリカではインディアナ州のゲーリー(USスティール社)やイリノイ州のプルマン(現在はシカゴの一部。プルマン寝台車会社)などがある。日本の企業城下町の典型例としては,資本規模の大きな重化学工業が発達した都市,たとえば苫小牧(王子製紙),日立(日立製作所),豊田(トヨタ自動車),水俣(チッソ)などがあげられる。また近年は工業開発の進展により,地域外から大企業が進出したことによって地域社会が急激に変貌した新しい工業都市,たとえば君津(新日本製鉄),福山(日本鋼管。現,JFEスチール)などもこれにあたる。
企業城下町の特徴は,大企業と中小企業(下請企業)が階層構造をなし,そこに就業する労働者が全市人口の相当部分を占め,都市の経済や財政がそこに立地している大企業の好況,不況に大きく依存していることにある。大企業は雇用就業機会を創出するばかりでなく,社宅,寮,運動場などの福利厚生施設を有し,市民の多数を占める労働者の日常生活に対しても企業の管理を浸透することができる。これに対して中小企業の労働者は,賃金,労働時間,福利厚生施設で大企業労働者との差が大きく,経済構造の階層性が社会生活にも反映している。
政治構造の側面では,大企業に支援された人物がリーダーシップを握り,議会の議員構成にも大企業の影響力を及ぼしている。このような企業城下町においては,市民意識にも企業あっての地域という企業意識が色濃くみられ,公害問題が発生しても企業追及が弱いという自制作用がある。企業城下町の問題点は,特定の企業に対する経済的依存性にあり,企業の経営が順調な場合には都市も成長するが,産業構造の変動により構造不況業種となり経営が困難になると,都市全体に影響を及ぼし不況地域に転落するというもろさが指摘できる。1978年には特定不況地域中小企業対策臨時基本法が公布された。
執筆者:佐藤 守弘
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