詩人、小説家、フランス文学者。東京都生まれ。1976年(昭和51)東京大学教養学部フランス語学科卒業。零細な問屋、町工場の密集する下町に幼年期をすごし、味噌や醤油を商う生家の裏が映画館という環境のなか、「自宅のいちばん裏の部屋の窓際に坐りこみ、塀越しに、向かいの建物からかすかに洩れてくる」映画の音声に耳を澄まして育つ。この「スクリーンの裏側の虚ろな空間そのものに棲みつい」た体験が、後に「投射としての映画」を彼に論じさせることとなる。
大学卒業後の1976年から1978年および1980年から1981年にはフランス政府の給費留学生として渡仏し、パリ第三大学にて文学博士号を取得。帰国後、第一詩集『ウサギのダンス』(1982)を出版、また詩人朝吹(あさぶき)亮二(1952― )らと同人誌『麒麟(きりん)』を創刊し、詩集『冬の本』(1987)で高見順賞を受賞するなど、新進詩人としての地歩を固める。並行して評論集『口唇論――記号と官能のトポス』(1985)、念願の映画評論集『映画n-1』(1987)を刊行。「唇のはざまとしての口」といった空白=中間領域のイメージや映画を「隔たりの装置」と捉えるモチーフは、創作・評論を問わず松浦の作風を貫いている。
『平面論――1880年代西欧』(1994。渋沢クローデル賞)、『エッフェル塔試論』(1995。吉田秀和賞)、『折口信夫論』(1995。三島由紀夫賞)、『知の庭園』(1998。芸術選奨文部大臣賞)と批評家としての評価も定着するなか、初の小説『もののたわむれ』(1996)を刊行。当初は文字通り「才人の戯れ」のように受けとめられるも、内田百閒(ひゃっけん)や吉田健一の影響を感じさせもする筆致は作を追うごとに洗練され、『花腐(はなくた)し』(2000)で第123回芥川賞を受賞、領域を横断する活躍を続けている。
[市川真人]
『『ウサギのダンス』(1982・七月堂)』▽『『口唇論――記号と官能のトポス』(1985・青土社)』▽『『冬の本』(1987・青土社)』▽『『映画n-1』(1987・筑摩書房)』▽『『平面論――1880年代西欧』(1994・岩波書店)』▽『『折口信夫論』(1995・太田出版)』▽『『もののたわむれ』(1996・新書館)』▽『『天有月』(1996・思潮社)』▽『『知の庭園』(1998・筑摩書房)』▽『『花腐し』(2000・講談社)』▽『「方法序説」1~3(『批評空間』第Ⅱ期23~25号、1999~2000・太田出版)』▽『『エッフェル塔試論』(ちくま学芸文庫)』▽『『松浦寿輝詩集』(現代詩文庫)』
各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...
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