改訂新版 世界大百科事典 「松野」の意味・わかりやすい解説
松野[町] (まつの)
愛媛県南西部,北宇和郡の町。人口4377(2010)。東,南,西の三方を高知県に接し,四万十(しまんと)川の支流広見川が中央部北寄りを,目黒川が南西部を流れる。北東には戸祇御前(とぎごぜん)山(946m),南西には郭公(かつこう)岳(1010m),三本杭(1226m)がそびえる。中心集落の松丸には,戦国期に〈河原淵殿〉と称された渡辺氏の川後森(かわごのもり)城があった。渡辺氏は土佐一条氏の一族と伝え,川後森城を本拠に広く一帯を支配した。町域は江戸時代は宇和島藩領と吉田藩領に分かれ,松丸と吉野は両藩領の在郷町であった。南部の山地は,吉田藩領の目黒と宇和島藩領の次郎丸(のちの豊岡)との間で境界をめぐり長期間の争論が展開され,江戸出訴に及んでいる。農林業が主体で,米作を中心に畜産や果樹栽培,明治以来の養蚕が行われ,杉,ヒノキの良材やシイタケの産がある。また緑茶の生産も進められている。広見川は水量が豊富で天然ウナギは名産。目黒川上流は滑床(なめとこ)渓谷の景勝地で,清流を利用してマスの養殖も行われる。JR予土線,国道381号線が通じる。
執筆者:上田 雅子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報