(読み)タク

デジタル大辞泉 「柝」の意味・読み・例文・類語

たく【×柝】

拍子木。また、拍子木を打つこと。
庫裏くり夕食を知らせる―が鳴っている」〈倉田出家とその弟子

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精選版 日本国語大辞典 「柝」の意味・読み・例文・類語

たく【柝】

  1. 〘 名詞 〙 拍子木。また、拍子木を打つこと。
    1. [初出の実例]「非金非石非匏木、却怪渓辺撃柝来」(出典:新編覆醤続集(1676)一・継響林春徳所貽擡今二韻之僧都詩寄謝)
    2. [その他の文献]〔易経‐繋辞下〕

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普及版 字通 「柝」の読み・字形・画数・意味


9画

(異体字)
20画

[字音] タク
[字訓] さく・ひらく・ひょうしぎ

[説文解字]

[字形] 形声
声符は斥(せき)。斥に(たく)の声がある。斥の正形は。不自然な逆の状態を示し、柝とは木の裂けることをいう。〔説文〕六上に「(わか)つなり」とあり、木を両分する意。それで撃柝(げきたく)(拍子木)の意に用いる。撃柝の柝の正字は(たく)で、その声符は(たく)。〔説文〕に「夜行(めぐ)りてなり」とあり、拍子木をいう。〔左伝、哀七年〕「魯の柝、(ちゆ)に聞ゆ」とあり、遠くまで聞こえる音であった。はほとんど用例のない字である。

[訓義]
1. さく、ひらく。
2. ひょうしぎ、夜廻り

[古辞書の訓]
名義抄〕柝 サク・クダク・ヲル・カク・ヒサシ

[熟語]
柝居・柝撃・柝声・柝封
[下接語]
哀柝・寒柝・関柝・金柝・撃柝・厳柝・鼓柝・烽柝・鳴柝・夜柝

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「柝」の意味・わかりやすい解説

柝 (き)

神事祭礼をはじめ民俗芸能,見世物,相撲,人形浄瑠璃,歌舞伎などの開始,段落,終了の合図として打たれる四角に削った二つの木片。拍子木ともいう。雅楽笏拍子(しやくびようし)や声明(しようみよう)の割笏(かいしやく)のように,楽器としての性格の強いものから,夜番の拍子木のように合図として伝達する性格までの幅がある。いずれにしても,響きのよさが重要視されるので,堅い樫材を使用し,1本を二つに割って削る。打ち合わせる面をかまぼこ形に削ったものもある。

 歌舞伎では,時間・物事の節目を示し,〈知らせ〉〈きっかけ〉〈ツナギ〉の用法がある。知らせは,全俳優の楽屋到着を知らせる鳴物〈着到(ちやくとう)〉の最後に打つ〈着到止め〉に始まり,舞台を飾り終わった開幕10分前に3階楽屋への上り口で二つ打つ〈二丁〉,開幕前に役者の集合を促すための〈廻り〉(頭取部屋,囃子部屋,小道具部屋,大道具部屋,以前は3階,2階の楽屋をも回って打った),舞台と役者を点検してチョンチョンと柝を打って開幕合図をする〈直し〉,鳴物に合わせて柝を刻んで幕を明け,明けきると〈止め柝〉で芝居にかかる。柝はまた,舞台効果の一翼をになう。御殿・世話場・廓などの情景を表現する下座音楽に合わせて,〈直し〉から〈止め柝〉を入れる。閉幕に際しても柝は同様に働く。せりふや動作の止りでまず柝頭(きがしら)を入れ,気分の持続を見はからいながら,静かに刻み幕にしていく。閉幕時の刻み方にも,ゆっくりと打ち始めしだいに早く刻む〈本幕(ダラ幕)〉と,小さく刻んでしだいに音を高くしテンポをゆるめて刻む〈拍子幕〉とに使い分けられている。また芝居の続行中,チョチョンの軽い二丁をきっかけに,床(義太夫節)の御簾(みす)が上がり,または清元,常磐津連中の囲い(霞幕)がはずされ,演奏が始まる。そのほか,月の出し入れ,セリの上下,舞台の回し,暗転,浅葱(あさぎ)幕・道具幕あるいは黒幕の振落し,振りかぶせなどのきっかけは,きっぱりとした〈一丁柝〉と,それぞれ情景に応じた使い分けが見られる。〈ツナギ〉は,いったん閉幕しても次の幕へ劇的緊張を持続させる〈返し幕〉で用いられ,幕間中繰り返し打たれる。これらの柝は,狂言作者が打つ。各自,油をしみこませて音が冴えるよう手入れし,つねに袋に入れて自前で保管する。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「柝」の意味・わかりやすい解説


拍子木のこと。長さ 20~30cmのかしの角棒を2本打合せる。歌舞伎では楽屋内の合図,幕の開閉などに用いる。舞台で床に板を敷いて打つ場合は「つけ」ともいう。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【歌舞伎】より

…長唄と囃子のそれを〈出囃子(でばやし)〉,浄瑠璃系のそれを〈出語り〉と呼ぶ。 第3は〈(き)〉(拍子木)と〈ツケ〉である。〈柝〉は,幕明き,幕切れ,道具替りのきっかけなどを知らせる合図である。…

※「柝」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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