出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
神事や祭礼をはじめ民俗芸能,見世物,相撲,人形浄瑠璃,歌舞伎などの開始,段落,終了の合図として打たれる四角に削った二つの木片。拍子木ともいう。雅楽の笏拍子(しやくびようし)や声明(しようみよう)の割笏(かいしやく)のように,楽器としての性格の強いものから,夜番の拍子木のように合図として伝達する性格までの幅がある。いずれにしても,響きのよさが重要視されるので,堅い樫材を使用し,1本を二つに割って削る。打ち合わせる面をかまぼこ形に削ったものもある。
歌舞伎では,時間・物事の節目を示し,〈知らせ〉〈きっかけ〉〈ツナギ〉の用法がある。知らせは,全俳優の楽屋到着を知らせる鳴物〈着到(ちやくとう)〉の最後に打つ〈着到止め〉に始まり,舞台を飾り終わった開幕10分前に3階楽屋への上り口で二つ打つ〈二丁〉,開幕前に役者の集合を促すための〈廻り〉(頭取部屋,囃子部屋,小道具部屋,大道具部屋,以前は3階,2階の楽屋をも回って打った),舞台と役者を点検してチョンチョンと柝を打って開幕合図をする〈直し〉,鳴物に合わせて柝を刻んで幕を明け,明けきると〈止め柝〉で芝居にかかる。柝はまた,舞台効果の一翼をになう。御殿・世話場・廓などの情景を表現する下座音楽に合わせて,〈直し〉から〈止め柝〉を入れる。閉幕に際しても柝は同様に働く。せりふや動作の止りでまず柝頭(きがしら)を入れ,気分の持続を見はからいながら,静かに刻み幕にしていく。閉幕時の刻み方にも,ゆっくりと打ち始めしだいに早く刻む〈本幕(ダラ幕)〉と,小さく刻んでしだいに音を高くしテンポをゆるめて刻む〈拍子幕〉とに使い分けられている。また芝居の続行中,チョチョンの軽い二丁をきっかけに,床(義太夫節)の御簾(みす)が上がり,または清元,常磐津連中の囲い(霞幕)がはずされ,演奏が始まる。そのほか,月の出し入れ,セリの上下,舞台の回し,暗転,浅葱(あさぎ)幕・道具幕あるいは黒幕の振落し,振りかぶせなどのきっかけは,きっぱりとした〈一丁柝〉と,それぞれ情景に応じた使い分けが見られる。〈ツナギ〉は,いったん閉幕しても次の幕へ劇的緊張を持続させる〈返し幕〉で用いられ,幕間中繰り返し打たれる。これらの柝は,狂言作者が打つ。各自,油をしみこませて音が冴えるよう手入れし,つねに袋に入れて自前で保管する。
執筆者:富田 鉄之助
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…長唄と囃子のそれを〈出囃子(でばやし)〉,浄瑠璃系のそれを〈出語り〉と呼ぶ。 第3は〈柝(き)〉(拍子木)と〈ツケ〉である。〈柝〉は,幕明き,幕切れ,道具替りのきっかけなどを知らせる合図である。…
※「柝」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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