椎間板ヘルニア(読み)ツイカンバンヘルニア(英語表記)Intervertebral Disc Herniation

デジタル大辞泉 「椎間板ヘルニア」の意味・読み・例文・類語

ついかんばん‐ヘルニア【椎間板ヘルニア】

椎間板髄核が外側へ、多くは背中側へ脱出した状態。脊髄や神経を圧迫するので痛み、腰椎ようついに起こることが多く、ぎっくり腰かたちで発症することもある。

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精選版 日本国語大辞典 「椎間板ヘルニア」の意味・読み・例文・類語

ついかんばん‐ヘルニア【椎間板ヘルニア】

  1. 〘 名詞 〙 ( ヘルニアは[ラテン語] hernia ) 脊椎と脊椎の間にある椎間板の一部が、後方へとび出して、脊髄神経が脊椎腔から外へ出る根本のところで、神経を圧迫する疾患。頸椎下部と腰椎下部に多く、激しい神経痛、運動障害を起こす。急激に頸や腰を動かした時に発病することが多い。〔胃袋(1963)〕

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家庭医学館 「椎間板ヘルニア」の解説

ついかんばんへるにあ【椎間板ヘルニア Intervertebral Disc Herniation】

◎腰椎(ようつい)の下部におこりやすい
[どんな病気か]
◎腰部と頸部では症状がちがう
[症状]
[検査と診断]
◎急性期には、まず安静に
[治療]

[どんな病気か]
 椎間板は、椎体(ついたい)と椎体の間にあって、背骨(せぼね)(脊柱(せきちゅう))に加わる衝撃をやわらげるクッションの役目をしています。
 椎間板は、中央にゼラチンのような、やわらかい弾力性のある髄核(ずいかく)という部分があり、その周囲には繊維輪(せんいりん)という、比較的かたい軟骨が幾重にも囲んでいて、脊柱に上下から加わる力を全体に均一に分散させ、衝撃をやわらげています。
 20歳代になると、椎間板の変性が始まり、繊維輪の弾力性がなくなり、ところどころに亀裂が生じ始めます。
 一方、髄核はまだ水分を十分含んでいて、弾力性も保たれているので、椎間板に強い力が加わると、椎間板内部の圧が一時的に上昇し、繊維輪の亀裂から髄核が押し出されてきます(髄核の脱出)。この状態を、椎間板ヘルニアといいます。
 繊維輪の亀裂は、抵抗の弱い後側方や後方(背中側)に生じることが多いので、そこには脊髄や脊髄から分かれた神経根(しんけいこん)があるため(図「腰椎におこった椎間板ヘルニア」)、それらが脱出した髄核によって圧迫され、痛みなどの症状がおこります。
●病気になりやすい人
 椎間板ヘルニアは、髄核にまだ弾力があって、繊維輪に亀裂ができた20~30歳代の男性に多い病気で、腰椎の下部にもっともおこりやすく、この年代の男性にみられる腰痛(ようつう)の多くは、この病気が原因になっています。
 急激に腰をひねったり、中腰で重いものを持ち上げたりしたときに、椎間板に強い力が加わっておこることが多いものです。
●おこりやすい部位
 腰椎におこることが多く、頸椎(けいつい)(くびの脊椎)におこることもありますが、腰椎に比べると頻度ははるかに低いものです。頸椎におこった椎間板ヘルニアは、手の痛みやしびれの原因になります。

[症状]
 ヘルニアのおこった部位によって症状はちがいます。また、髄核の脱出の程度と症状の強さは、必ずしも比例しません。ヘルニアの程度は軽いのに、症状が強いこともあれば、その逆のこともあります。
■腰椎の椎間板ヘルニア
 重いものを持ったり、腰をひねったりしたときに突然激しい痛みがおこる、いわゆるぎっくり腰(ごし)のかたちで発症することがあります。
 発症直後は、激しい痛みで動けませんが、たいてい2~3週間で軽くなり、その後、慢性化します。
 また、いつとはなしに、鈍い腰痛や手足(四肢(しし))のしびれ感で始まり、しばらくすると症状は消えるのですが、また、いつとはなしに再発するといったことをくり返す、慢性型で始まることもあります。
 急性であれ慢性であれ、腰椎におこった椎間板ヘルニアでは、多くは腰痛のほかに、左右どちらかの臀部(でんぶ)(おしり)から、太ももの後ろ側、膝(ひざ)から足首までの外側、さらにつま先にまで激しい痛みが走る坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)の症状をともないます。
 ヘルニアによる坐骨神経痛の特徴は、せき、くしゃみ、あるいは排便時にいきんだりするだけでも痛みが強くなることで、これをデンジェラ症候(しょうこう)ということもあります。
 顔を洗うときに前かがみになったり、中腰など、腰を丸める姿勢でも痛みが増し、背中をまっすぐに伸ばしたり、寝た姿勢で安静にしていると、痛みは軽くなります。
 さらに、痛みのほかに、しびれや脱力感、知覚障害がみられ、ものにつまずきやすくなったりします。
 腱反射(けんはんしゃ)(腱を打つと筋肉が収縮する反射。膝頭(ひざがしら)を軽くたたくと、反射的に足がはね上がることで知られています)が鈍くなったり、筋肉の萎縮(いしゅく)、筋力の低下が現われることもあります。
■頸椎の椎間板ヘルニア
 頸椎に椎間板ヘルニアがおこると、おもに左右どちらかの腕に放散する痛み、しびれ、脱力感などがおこり、くびの後ろ側が痛むため、くびが動かせなくなったりします。
 髄核が後方中央に大きく脱出したときは、神経根よりも脊髄を直接圧迫するために、しびれ感が足の先から上のほうに上がり、胸のあたりから腕までしびれます。
 そのため、歩行障害がおこりやすく、とくに階段を昇り降りするときによろけたりすることがあるので、注意が必要です。
●受診する科
 腎臓(じんぞう)、尿路、性器などのいろいろな病気で椎間板ヘルニアに似た症状がおこりますが、腰痛や下肢(かし)(脚(あし))のしびれ感があるときは、整形外科を受診しましょう。

[検査と診断]
 まず最初に問診で症状や経過を詳しく聞き、どのような姿勢で、どのように痛むかなどを調べます。
 また、あおむけに寝て、足をまっすぐ伸ばしたまま上に上げると、腰からつま先まで強い痛みが走るラセーグ徴候(ちょうこう)があるかどうかを調べます。
 そのほか、知覚障害の範囲、筋力低下の部位、腱反射の状態などを詳しく調べることで、どの部位に椎間板ヘルニアがおこっているかまで知ることができます。
 しかし、他の脊椎や脊髄の病気と鑑別するために、X線検査、筋電図検査、血液検査、尿検査が行なわれることもあります。椎間板ヘルニアであれば、血液・尿検査に異常はみられません。
 なお、脊椎を体外から撮影する単純X線検査では、椎間板ヘルニアを発見することはできませんが、MRIによる画像検査を行なうと、椎間板のようすがよくわかります。
 手術などのために、ヘルニアの位置と状態を正確に知る必要があるときは、脊髄腔(せきずいくう)にヨード製剤を注入して撮影する脊髄造影などの、特殊なX線検査が行なわれます。

[治療]
 椎間板ヘルニアの痛みは、脱出した髄核によって神経根が圧迫されることと、神経根やその周囲に炎症がおこることが原因ですから、痛みの激しい急性期には、消炎鎮痛薬を内服して、安静にしていれば、数日~1週間で楽になります。
 しかし、炎症が一時的に消えても、ヘルニアがひっこんでしまうわけではないので、痛みが軽くなって慢性化したら、牽引(けんいん)療法や温熱療法、運動療法が行なわれます。
 牽引療法は、脊柱をひっぱって伸ばし、脱出した髄核が自然にひっこむのを期待する療法です。
 温熱療法の目的は、腰や脚の痛む部分を温めて、かたくなった筋肉をやわらかくし、同時にヘルニアがおこっている部分の血行をよくして、炎症を治すことです。病院の理学療法室だけでなく、自宅のお風呂で、ぬるめの湯にゆっくりと入ることも効果があります。
 鍼(はり)は、筋肉のこわばりをとり、痛みで筋肉がかたくなり、筋肉がかたいために骨や神経の位置関係が固定して痛みがとれないといった悪循環をたちきるのに有効です。運動療法と組み合わせると、いっそう効果的です。
 また筋肉、とくに腹筋を強化するために、腰痛体操(ようつうたいそう)(図「腰痛体操(1)」図「腰痛体操(2)」図「腰痛体操(3)」図「腰痛体操(4)」)を行なうことがたいせつです。
 通院でこれらの治療を受けても、症状が頑固(がんこ)に続く場合や、痛みがひどくて歩くこともできないようなときは、入院が必要になります。
 病院では、ベッド上で牽引療法を長時間続けるとともに、局所麻酔薬やステロイド薬(副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン薬)を痛む部位に注入する硬膜外(こうまくがい)ブロックなどが行なわれます。
 それでもなお効果がない場合は、手術の対象になります。
●手術
 手術の前に、MRIや脊髄造影を行ない、ヘルニアの位置や状態を確認します。手術はふつう、全身麻酔で行なわれます。
 手術の方法には、背中を切開して脱出した髄核を切除する後方手術と、腹側からヘルニアを椎間板ごと摘出する前方手術とがあります。
 どちらの方法を選ぶかは、ヘルニアの大きさ、椎間板の変性の程度、ヘルニアをおこした部分の近くの脊椎の状態などによって決められます。
 1か月くらいの入院が必要ですが、2週間もすると歩けるようになります。手術後の経過は、手術法によってもちがいますが、一定期間はコルセットを使ったり、背筋や腹筋を強化する運動療法が必要になることもあります。
 担当医師の注意を守り、決められた安静期間内は、脊椎に負担がかかるようなことは避けなければなりません。
●すぐに手術ができないとき
 いろいろな事情で、すぐに手術が受けられないときは、定期的に診察を受け、医師から日常生活や仕事面で注意すべきことを指示してもらいましょう。
 しかし、重度のヘルニアでは、保存的療法(手術せずに治療すること)で一時的に症状が軽くなっても、またすぐに再発します。
 また、再発をくり返しているうちに、脱出した髄核と神経根が癒着(ゆちゃく)したり、圧迫によって神経根が変性におちいったりすることがあります。こうなってからでは、手術しても完全な回復は望めません。
 こうしたことにならないためにも、医師から手術を勧められたら、なんとか都合をつけて、早めに手術を受けることがたいせつです。
 最近は、大きく切開せずに、皮膚の小さな孔(あな)から内視鏡を入れて髄核を摘出する方法(経皮的髄核摘出術(けいひてきずいかくてきしゅつじゅつ))が行なわれるようになり、手術後の安静期間も短縮されました。
 しかし、すべてのヘルニアがこの方法で治療できるわけではないので、主治医からよく説明を受けるようにしてください。

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改訂新版 世界大百科事典 「椎間板ヘルニア」の意味・わかりやすい解説

椎間板ヘルニア (ついかんばんヘルニア)
hernia of intervertebral disc

背骨(脊椎骨)の前方部分である椎体と椎体の間を連結している軟骨(椎間板)が,外に向かって(通常は後方に)突出する現象。一般には年齢的変化によって弾力性が減った椎間板が,ちょっとした外力や日常生活動作などをきっかけにして突出し,すぐ後ろにある脊髄や脊髄神経を圧迫し,痛みやしびれ,さらに手足の力が抜けたり,感じが鈍くなったり,ときには大小便が出しにくくなったり,という神経の症状をひき起こす。腰の骨(腰椎)にいちばん多く,次いで首の骨(頸椎)に起こり,まれには背中の骨(胸椎)にも起こる。

(1)腰部椎間板ヘルニア 腰の痛みや下肢の神経痛(座骨神経痛)の原因として,きわめて多い病気である。20歳代,30歳代に多いが,10歳代後半や40歳以上にも少なくない。男性に多いが必ずしも重労働者に多いとは限らず,事務的な仕事にたずさわる人にかえって多いともいわれている。腰と下肢(通常は片側)と両方に痛みがあることが多く,体を前に曲げたり咳,くしゃみで痛みが増したりする。ときには足の力が弱ったり感じが鈍くなったり,まれには大小便が出しにくくなる。

 診察やX線検査などから腰部椎間板ヘルニアと診断がついたら,特殊な場合を除いては安静,コルセットなどにより腰を支え,薬物療法や注射療法などが行われる。症状が強かったり何回もくり返しているような場合には,入院して特殊なベッドの上で安静をとらせ,牽引療法をつけ加える。このような治療で数週間のうちに軽快するようなら,この治療法をつづける。しかし入院治療によっても軽快せず,また多少よくなったとしても日常生活に支障がある場合には,手術を考慮する。また,初めから大小便が出しにくかったり,足の麻痺が強い場合には,手術による治療を時期を失せずに行う必要がある。

 椎間板ヘルニアにならぬようにする確実な方法はないが,日常生活上の注意と腰のまわりの筋肉に対する治療体操(〈ぎっくり腰〉〈腰痛症〉の項参照)は助けになると考えられる。

(2)頸部椎間板ヘルニア 首の痛みや上肢の痛み,さらに下肢のしびれや手足の力が抜けてくる原因の一つとしてときどきみられる。腰部椎間板ヘルニアに比べれば少ない。30歳代から50歳代にかけて多いが,20歳代や60歳以上でみられることもある。男性にやや多い傾向がある。

 同様な症状の原因となる脊椎症(軟骨や椎骨の年齢的変化により余分な骨ができたりする病気)に比べると,症状の始まり方が急激だったり,進み方が比較的速い傾向がある。首の痛みと手または足の痛みやしびれが両方ともあることが多く,上を向くと痛みが手にひびいたりする。激しい痛みのために手を挙げていなくてはならない場合もある。また,足に力が入らず歩くのにつまずきやすくなったりする。大小便が出にくくなることもあるが,あまり多くない。

 椎間板ヘルニアか脊椎症かは,診察やX線検査のみでは必ずしもわからないが,治療としては一般に,安静,頸部カラーなどの装具により首を支え,牽引療法,薬物療法,注射療法などが行われる。痛みが著しい場合や手や足(とくに足)の神経が侵されている場合には,入院治療が行われる。特殊なベッド上にねかせ牽引療法その他の療法を行う。通常は首や手の痛みはこれらの療法でよくなることが多いが,障害が残った場合や,歩行困難などの脊髄の症状が強い場合には,手術が行われる。

 予防法として確実なものはないが,寝るときのまくらの高さに注意したり(低めのまくらがよい),不自然な姿勢や上を向いたままでの仕事をさける,などの日常生活上の注意,首や上肢の柔軟運動などが役立つと考えられている。

(3)胸部椎間板ヘルニア 他の部位に比べればまれである。中年の男性にみられ,背中の痛み,背中から胸にかけての痛み(肋間神経痛),足のしびれや力が抜けるなどの神経症状をひき起こす。診断はときに困難であり,脊髄の腫瘍などと紛らわしいことが多い。治療は手術が必要になることが多い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「椎間板ヘルニア」の意味・わかりやすい解説

椎間板ヘルニア
ついかんばんへるにあ

椎間板(椎間円板)は脊椎(せきつい)の椎体間にあってクッションのような役割を果たしているが、この椎間板が、不自然な運動などで外力に耐えられず、被膜を破って脊柱管内に逸脱した状態、すなわち、椎間板の外層である線維輪が退行変性をおこした状態を椎間板ヘルニアという。代表的なものが腰椎椎間板ヘルニアで、ついで多くみられるのが頸椎(けいつい)椎間板ヘルニアであり、胸椎椎間板ヘルニアは比較的まれである。

[永井 隆]

腰椎椎間板ヘルニア

腰痛や下肢痛(坐骨(ざこつ)神経痛)などを訴える腰痛疾患のうちもっともありふれたものであり、20~40歳に多く、腰部の急激な運動あるいは不用意に重量物を持ち上げたときに発症する。この急激な腰痛はぎっくり腰ともよばれ、発生部位は第4と第5腰椎間、第5腰椎と第1仙椎間の椎間板によるものが、だいたい90%を占める。治療法としては、ヘルニア発生当初の腰痛が強い場合、まず仰臥(ぎょうが)位をとり、座ぶとんを1枚丸く巻いて膝(ひざ)の下に入れ、股(こ)関節と膝(しつ)関節が屈曲位をとるようにし、さらに胸椎以上に座ぶとんを1、2枚入れて腰椎部をすこし丸くした姿勢にするとよい。入院後の保存療法としては、腰椎の牽引(けんいん)、鎮痛剤の投与などを行う。3週間の牽引でも効果がなければ副腎(ふくじん)皮質ホルモンを硬膜外に注入する。それも効果がなければ手術療法の適応となる。

[永井 隆]

頸椎椎間板ヘルニア

第5と第6頸椎間、第6と第7頸椎間、第4と第5頸椎間の順にみられ、頸痛や項部(こうぶ)痛のほか、上肢の疼痛(とうつう)と知覚障害を訴える。頸髄を圧迫して下肢の麻痺(まひ)をきたすこともある。局所の安静と固定のために、ポリエチレン製の頸椎カラーなどを装着する。保存的治療で効果がみられないときは手術が行われる。

[永井 隆]

胸椎椎間板ヘルニア

胸椎下部に好発し、背部痛や肋間(ろっかん)神経痛とともに下肢の脱力、知覚障害などがみられる。

[永井 隆]

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内科学 第10版 「椎間板ヘルニア」の解説

椎間板ヘルニア(脊椎脊髄疾患)

定義・概念
 椎間板ヘルニアは髄核を取り囲んでいる線維輪の後方部分が断裂し,変性した髄核が断裂部から後方に逸脱することにより神経根,馬尾,脊髄を圧迫して神経症候を呈したものである.
疫学
 発症好発年齢は20歳代から40歳代で,頸椎症や腰部脊柱管狭窄症よりも若い.男女比は2~3:1で男性に多い.腰椎に圧倒的に多く,頸椎は少ない.胸椎はまれである.
臨床症状
1)腰椎椎間板ヘルニア:
急性の神経根症として下肢の痛み,しびれ,腰痛で発症することが多い.好発高位はL4/5,L5/S1椎間で,ついでL3/4椎間である.L4/5,L5/S1椎間では,臀部大腿後面の坐骨神経領域の疼痛を起こし,下肢伸展挙上テストで70度以下で下肢後面に疼痛が起きる( Lasègue徴候陽性).
2)頸椎椎間板ヘルニア:
多くは外側にヘルニアが脱出して神経根を障害し,頸部痛,肩甲部痛と障害神経根領域の運動感覚障害を起こす.また正中部のヘルニアで脊髄症を起こすことがある.
検査成績
 MRIにて脱出椎間板を描出できる(図15-18-4).経過・予後 椎間板ヘルニアの半数程度は3カ月以内に自然退縮する.
治療・予防・リハビリテーション
 疼痛が強い場合は鎮痛薬,さらには神経根ブロックを行う.症状が高度の場合や3カ月たっても改善しない場合には手術治療を考慮する.[安藤哲朗]
■文献
日本整形外科学会診療ガイドライン委員会,腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン策定委員会編:腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2011,改訂第2版,pp1-94,南江堂,東京,2011.

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百科事典マイペディア 「椎間板ヘルニア」の意味・わかりやすい解説

椎間板ヘルニア【ついかんばんヘルニア】

椎間板(椎間円板)が後方に脱出して,脊髄根の圧迫を起こすもの。髄核が繊維輪を破って脱出することが多い。頸(けい)部や胸部にも起こるが,腰部,特に第4〜5椎間板に多発し,座骨神経痛を起こし,下腿(かたい)および足部の知覚鈍麻をもたらす。急性の腰椎の椎間板ヘルニアは重い物を持ち上げようとする時などに腰部の激痛とともに起こり,運動不能となるので,俗に〈ぎっくり腰〉と呼ばれる。治療は安静が第一で,骨盤牽引(けんいん)を行い,鎮痛薬や筋弛緩(しかん)剤の投与,局所の温熱療法などで症状の軽快を待ち,軟性コルセットで再発を防止する。痛みがひどい場合は,副腎皮質ホルモン剤を注入する硬膜外ステロイドブロックを行うが,根治療法は脱出した椎間板の外科的切除。
→関連項目頸椎間板ヘルニアペインクリニックヘルニア腰痛症

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「椎間板ヘルニア」の意味・わかりやすい解説

椎間板ヘルニア
ついかんばんヘルニア
herniation of the intervertebral disc

椎間板の退行変性などによって線維輪の抵抗が弱まって断裂ができ,その部分から半流動体の髄核が脱出する状態をいう。さらに髄核が椎間板や靭帯の隙間を貫いて飛び出し,脊椎の後方にある脊髄神経を圧迫すると,俗にぎっくり腰といわれる強い腰痛と下肢に放散する坐骨神経痛が起る。普通は安静と筋弛緩剤でなおるが,骨盤牽引やサポータさらには手術を必要とすることもある。

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世界大百科事典(旧版)内の椎間板ヘルニアの言及

【ぎっくり腰】より

…最も多い原因は,背骨の椎骨と椎骨との間にある軟骨,すなわち椎間板の病気である。椎間板は弾力性がありクッションのような作用をしているが,20歳を過ぎればすでに老化現象が始まり,外力に対して少しずつ弱くなり,急激な動作などによってその一部が破れたり飛び出したりして神経を圧迫するなどにより,急性の腰痛をひき起こす(椎間板ヘルニア)。第2の原因としては腰の筋肉の病気がある。…

【寝違い】より

…消炎鎮痛剤の投与も有効である。類似の症状で注意を要するのは,頸椎椎間板ヘルニアによる神経根痛である。しかし,この場合の痛みは首だけでなく肩から上肢に放散することが多い。…

※「椎間板ヘルニア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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