明治・大正期の農学者,農政学者,農業指導者 東京農業大学初代学長;東京帝大名誉教授。
出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報
農学者。肥後国(熊本県)出身。熊本洋学校卒業後,1880年東京駒場農学校卒業。82年福岡県農学校教諭となり,このとき塩水選種法を創案。89年M.フェスカの推薦により農商務省に迎えられたが,翌年辞任。90年農学会幹事長(のち会長)となり“興農論策”策定の中核的役割を果たす。94年東京帝国大学農科大学教授となり,1922年まで農学および農政経済学を講ずる。1906年から死去まで大日本農会の副会頭,理事長を務め,この間全国数百ヵ町村を遊説し,直接農民に農業の振興を訴え続けたことは特筆される。東京農業大学学長,農業教育研究会会長,帝国耕地協会会長その他多くの農政関係の団体・機関に参画し,農業界諸分野に重きをなした。初期の著書は《稲作改良法》《栽培汎論》など技術分野のものであるが,その後の著書は《農業経済学》《合関率》《農村改良論》《小農に関する研究》など農政・経済分野のものとなる。《横井博士全集》がある。
執筆者:安田 健
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
近代日本の代表的な農学者。熊本藩士の家に生まれ、1871年(明治4)熊本洋学校に学び、ついで駒場(こまば)農学校で農芸化学を専攻して1880年に卒業。1885年福岡県立農学校教諭となり、欧米の学問技術と在来農法との交流に努め、篤農層のよき相談相手となり、種籾(たねもみ)選別に塩水選の方法を案出した。『稲作改良法』(1888)などの著作は、農業先進地帯福岡の手作地主の積極性に対応したものといえよう。1894年帝国大学農科大学助教授となり、1899年ドイツに留学、帰国後教授に昇進した。老農の在来農法を土台として農事改良の重視された明治前中期に、科学的品種改良・施肥経営改善に尽力、稲作を中心とした小農経営の維持前進に大きな役割を果たしたが、大正中期以降の農業危機に際しては地主制下小農保護の「地主農政」的農本主義の中心となった。おもな著書に『農業汎論(はんろん)』(1892)、『栽培汎論』(1898)、『稲作改良論』(1904)などがある。昭和2年11月1日没。
[長 幸男]
『大日本農会編『横井博士全集』全10巻(1925~27・横井全集刊行会)』
(須々田黎吉)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…新しい地域に従来なかった新種,新品種を導入することや,全く新しい生物種を創出することも含む。もともと農業技術の一つであり,横井時敬がはじめて用いた言葉(1903)であるが,最近は分子育種など,分子生物学を利用する微生物の育種にまで,この言葉が用いられる。育種技術の改良を研究する分野を育種学というが,一種の応用科学であり,利用される学問分野は遺伝学を中心とした生物学全般,生化学,統計学など広い範囲に及ぶ。…
…食塩水のほか,硫安,塩化カリなどの水溶性の高い肥料,にがり水も用いられる。稲作では古くから唐箕(とうみ)選(風選),水選が行われていたが,1898年に近代農学の祖,横井時敬(ときよし)が塩水選の効用を科学的に立証し,普及,奨励につとめたため,今日では稲作だけでなく,麦作などでも広く実行されている。塩水選の普及が明治時代の近代的農業技術の普及の契機であったといわれている。…
…ケルナーは土壌・肥料,植物栄養,家畜飼養,農産製造,蚕体生理の諸研究面において,フェスカは《日本地産論》などを著す過程において,ダンは畜種改良,牧草導入,輪作,草地改良,大型機械利用の各面において,大きな影響を与えた。 それら本邦農学,泰西農学を受けて,〈明治農学〉ともいうべき新分野を展開したのが,横井時敬,酒勾常明,古在由直らの農学者であった。横井は初期には農学の実験的分野に関心を示したが,後に経営,経済に力を入れ,《塩水選種法》《稲作改良法》などの著書があり,酒勾には《改良日本稲作法》があり,ケルナーの弟子古在は,日本における農芸化学の祖ともいうべき農学者であり,公害研究の先駆者でもあった。…
…国家の元気は衰へざるを得ざるなり〉(平田・杉山孝平《信用組合論》)というように,自作農中堅,耕作地主層の動揺を治めて,国家の社会的基盤の安定化を図ろうとした。(2)横井時敬,岡田温,山崎延吉のような学者,帝国農会指導者の主張する地主―小作関係の安定を図るための小農保護論たる地主的農本主義。〈農業は尊いものである,偉大なものであると云ふ考えを起すやうにしてやつたならば始めて小作人が逃げて行かぬやうになる〉(横井《農事振興集》)というように地主制の安定化を図ろうとした。…
※「横井時敬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加