( [ 一 ]③について ) ( 1 )全国的にみれば、土間(上がり口)から見て炉端の最も奥に位置する、家長の座を指すのが一般的である。
( 2 )客座や女房座を「横座」と称する地方も点在するが、これは最も奥の家長の座から見て横手の座との語源解釈が働いた結果であり、新しい呼称と考えられる。
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
炉のある台所や居間をさす地方もあるが、全国的に共通するのはいろり端での家の主人の座席をさす名称。所によっては亭主席(四国)、奥座(近畿)、上座(かみざ)(新潟県)などともよぶ。その位置は、土間からみていちばん奥、正面の席である。古来、正座(せいざ)には敷物を横ざまに敷くのが習わしであるが、横座の名称はここに敷く敷物を横広げに敷いたことにちなむのであろう。今日、床の間の前の畳は横に敷くのも同じいわれによる。全国各地に「横座に座るは猫か馬鹿(ばか)」という類の諺(ことわざ)が伝えられており、これはたとえ主人が不在でも横座には他人は座ってはならないという諺で、横座はいわば戸主権の象徴であるといえよう。
[野口武徳]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…漢文体,1巻。狂言《横座》と同話。明徳の乱に敗れて東山に遁世した年輩の僧が難産の子牛を救い,住家の横座(上座)に置いて横座坊と名づけていつくしんでいたが,狼藉悪太郎に盗まれた。…
…住宅で家族が共通して,くつろいだり,だんらんのために使う部屋。〈居間〉という言葉は,江戸時代以前には主として主人あるいは夫人の居室を指し,それが近代以降西欧住宅のリビングルームに対応する概念となり,第2次世界大戦後の住生活の変化の中で定着した。歴史的にみると,日本の住宅には常に現在の居間と同じ機能を果たす空間があった。アイヌの住宅の内部は1室だけで,アペオイと呼ばれる炉の周囲で家族の座る席が決まっている。…
…照明機能としては,竪穴住居時代には,獣などの来襲を防ぐ役割を果たしていたと考えられるが,夜なべ仕事としてのわら細工の一部はイロリの明りでもおこなえた。家族の成員の位置づけとして,イロリには座の呼称があり,土間から見て奥の部分が横座で,家の主人が座った。横座に向かって右が嬶座(かかざ)で主婦が座り,嬶座の向いが客座であった。…
…イロリでは,土間から見て正面の席を上座とする。この座を横座と呼び,家の主人のみがすわる所とするのが全国的である。〈横座にすわるは猫・馬鹿・火吹竹〉などといい,主人不在の場合も他の者は横座にすわらなかった。…
…
【総説】
住居の類語としては,すぐに住宅・住いがあげられる。住宅と住居を比べると,住宅のほうが人間のすみかとしての建物の側面を強く含意する。住い(すまひ)は〈すまふ〉の連用形の名詞化であり,当て字として〈住居〉を用いることがある。つまり住居と住いは一応同義ととらえてよいし,そこには住むという人間の能動的な営み,すなわち人の暮しが浮き出されている。《日本大辞書》(山田美妙著,1892‐93)によると,〈すむ〉には(1)居所を定める〈住む〉,(2)濁りがなくなる〈澄む(あるいは清む)〉,(3)事終わってすべて澄むの〈済む〉があてられており,《岩波古語辞典》では〈すみ(棲み・住み)〉は〈スミ(澄)〉と同根であり,あちこち動きまわるものが,一つ所に落ち着き定着する意とある。…
※「横座」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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