球磨川や富士川と並ぶ日本三大急流の一つ。山形、福島県境の西吾妻山を水源とし、庄内平野を通って酒田港から日本海に注ぐ1級河川。国土交通省によると、長さ229キロで、流域面積7040平方キロは山形県全体の面積の約75%を占める。急流が多く、舟で下る際に難所が続くことから、
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山形県南端、
吾妻山地の北斜面の渓水は最上川本流である
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山形県を貫流する川。福島県境の吾妻火山に源を発し,米沢,長井,山形,新庄の4盆地を貫流し,出羽山地を最上峡で横切って庄内平野に出て,酒田市南西部で日本海に注ぐ。幹川流路延長は229kmで,山形県内だけを流れる。全流域面積は7040km2で県総面積の約75%を占め,上流域に多雪山地を有するため豊かな水量をもたらし,日本三大急流の一つといわれる。地形的には上流から長井盆地と山形盆地の間に五百川(いもがわ)峡,山形盆地と新庄盆地の間に碁点(ごてん),三ヶ瀬(みかのせ),隼(はやぶさ)のいわゆる三難所,新庄盆地と庄内平野の間に最上峡の峡谷をつくり,それぞれの盆地,平野を結んでいる。その間に白川,寒河江(さがえ)川,丹生(にゆう)川,小国(おぐに)川,鮭川,立谷沢(たちやざわ)川などの支流を合流し,盆地ごとに沖積地を形成している。
古くから水運に利用されたが,奥羽本線や陸羽西線の開通で水運は衰退した。水運に代わって最上川は10万haの水田を潤す農業用水源として,また上水道や工業用水の水源として重要な役割を担うことになった。発電用としても支流の上流部を中心に約20ヵ所の発電所が設置され,合わせて最大出力約20万kWの発電を行っている。さらに最近では沿岸の河川緑地や公園の整備も進み,最上峡の舟下りをはじめ観光の対象としても利用されている。また最上川は《古今集》に〈最上川のぼれば下るいな舟のいなにはあらず此月ばかり〉とあるのをはじめ,歌枕としてその後多くの歌人にうたわれており,《おくのほそ道》の芭蕉や歌人斎藤茂吉などとのかかわりも深い。日本の代表的舟唄《最上川舟唄》でも知られる。
執筆者:中川 重
《延喜式》の駅制によれば,野尻(現,大石田町駒籠),避翼(さるはね)(現,舟形町長者原),佐芸(さけ)(現,鮭川村佐渡真木)の間に伝馬と舟が置かれたとあり,古代から航行に利用されたことが知られる。室町初期に成立した《義経記》の中でも,北国落ちの源義経が,清川(現,庄内町)から合海(あいかい)(現,新庄市本合海)まで川船で上る様子が記され,当時の水運の利用が推測される。戦国期になると,酒田~清水(現,大蔵村)間の船路が開発・整備された。大石田が河港として画期的な発達をみるのは,山形の最上氏が1600年(慶長5)の出羽合戦で,村山,最上と庄内も領有するようになってからである。慶長末年には山形の外港として,最上川支流の須川にある船町も立てられた。上流は左沢(あてらざわ)(現,大江町)が終点とされたが,94年(元禄7)米沢の御用商人西村久左衛門らの開削によって置賜(おきたま)盆地にも通じるようになった。清水,大石田,船町が最上川の三河岸として早くから特権を維持したが,享保年間(1716-36)に寺津(現,天童市),本楯(もとだて)(現,寒河江市)が新しく河岸として認められた。最上川の川船の大部分は,酒田船と大石田船を中心とする最上船に分けられ,いずれも商人所有の町船である。中期以後,米沢藩,新庄藩,佐倉藩の御手船もあらわれた。川船は250俵積みを標準とする艜船(ひらたぶね)で,大小があり,元禄年間には酒田船が360艘,大石田船が292艘にのぼった。しかし中期以後はしだいに減少した。最上川の輸送物資は,下り荷の大部分は米で,天領の城米,各藩の蔵米が多く,商人の米,雑穀を含めて多いときは50万俵前後にも達した。このほか特産物の紅花,青苧(あおそ),漆,蠟なども下し,これらは酒田港から京,大坂の上方方面に出されたが,その帰り荷として,塩,木綿,茶,小間物,乾魚などが運ばれた。支流では小型の小鵜飼船が使われたが,幕末になるとこれが本流にも進出し,また寺津と船町の間で荷物の争奪が起こるなど,水運の慣行が乱れてきた。
1872年(明治5)幕藩制的舟運制度が廃止され,大小船の就航が自由となり,河岸の新設も認められた。蔵米の輸送もなくなったので,川船は小型化し,小鵜飼船が主流となった。明治10年代には山形,酒田および長崎に事務所を置く回漕会社や乗船常便社が設立された。酒田~糠野目(現,高畠町)間の川蒸気船の運行の計画もあったが実現せず,清川~大石田間にとどまった。1900年代の鉄道の開通によって,水運は急速に衰えた。
執筆者:横山 昭男
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山形・福島県境の吾妻火山(あづまかざん)に源を発し、山形県内を貫流し庄内平野(しょうないへいや)で日本海に注ぐわが国有数の大河。一級河川。幹線流路延長229キロメートル。源流は松川という。吾妻火山を流下してほぼ北流、米沢(よねざわ)、山形、新庄(しんじょう)の各盆地を貫流し、新庄盆地で向きを西に変え、最上峡をつくって出羽(でわ)山地を横切り、庄内平野に出て酒田市南部で日本海に流入する。流域面積7040平方キロメートルは県総面積の約75%を占め、しかも山形県内だけを流れる「一県一河川」であり、県内の主要都市のほとんどが沿岸に立地する。北から白川(置賜白(おきたましら)川)、寒河江(さがえ)川、須(す)川、丹生(にう)川、小国(おぐに)川、鮭(さけ)川、立谷(たちや)川などの支流をあわせ、盆地ごとに河川の侵食、流送、堆積(たいせき)の作用を繰り返すという地形的特色を示す。上流域は多雪地で豊かな水量をもたらし、高屋(戸沢村)の年平均流量は毎秒356トンに達する。一方、上流から五百川峡(いもかわきょう)、碁点(ごてん)・三ヶ瀬(みかのせ)・隼(はやぶさ)の三難所からなる碁点峡、最上峡などがあり、最上川が富士川、球磨(くま)川とともに日本三急流の一つといわれるのは、これらの峡谷部が急流で、舟運の盛んな大河としては難所が多かったことによる。
最上川の舟運は戦国時代に酒田―清水(しみず)(大蔵(おおくら)村)間が開発され清水河岸(かし)が置かれたのが端緒という。関ヶ原の戦い(1600)後、庄内地方を領有した最上義光(よしあき)によって三難所が開削されて急速に進展した。とくに寛永(かんえい)年間~慶安(けいあん)年間(1624~1652)にかけて川船中継権を獲得した大石田河岸(大石田町)が発達し、上り酒田船、下り大石田船という片運送の慣行も成立した。船町(ふなまち)河岸(山形市)など上流地域の最上船も含め大石田船差配役が統轄した。元禄(げんろく)年間(1688~1704)以降は上流地域の産業の隆盛や上杉藩による五百川峡上流部の黒滝の開削などで寺津(てらつ)(天童市)、本楯(もとだて)(寒河江市)、横山(大石田町)の三河岸も公認された。川船差配制が行き詰まると大石田には幕府直轄の川舟役所が設置された。おもな運送物資は、下り荷に流域各藩の蔵米、商人米、紅花、青苧(あおそ)など、上り荷は塩、塩魚、古手(ふるて)、茶、小間物などで、主として艜船(ひらたぶね)で運ばれ、後期には私船の小鵜飼(こうがい)船も活躍した。しかし明治30年代に入ると奥羽線の開通などで急速に衰退した。その後最上川は10万ヘクタールの水田を潤す農業用水源として、また上水道、工業用水として重要な役割を担うことになった。支流や上流部を中心にダム、発電所が多く設置されている。一方、最上峡舟下りの遊覧船などもあり、河川緑地、公園の整備も図られている。
なお、最上川は歌枕(うたまくら)として多く詠まれており、とくに「最上河のぼればくだる稲舟のいなにはあらずこの月ばかり」(『古今集』東歌)は名高い。このほか、芭蕉(ばしょう)、斎藤茂吉(もきち)など文人、墨客とのかかわりも深い。
[中川 重]
『『最上川』『最上のながれ』(1982・山形県総合学術調査室)』▽『井上八蔵著『最上川』(1982・叢文社)』
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出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域遺産」事典 日本の地域遺産について 情報
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…すなわち,(1)廻漕船は北国海運に慣れた讃岐の塩飽(しあく)島,備前の日比浦,摂津の伝法・河辺・脇浜などの廻船を用うべきこと。(2)最上川川船の運賃はいっさい幕府の負担とし,上流船の運漕独占をやめ下流船にも運漕させる。酒田港に幕領米専用の米蔵を設け,廻船に積み込むまでの費用も幕府が支弁する。…
…75年酒田県は鶴岡県と改称,次いで76年山形県が鶴岡・置賜両県を併合して現在に至っている。出羽国【狐塚 裕子】
[母なる川最上川と連なる山なみ]
県域のほぼ中央部を貫流する最上川は,山形県の母なる川と呼ばれている。その流域面積は県域の76%を占め,しかも県内だけを流れる〈1県1河川〉という特徴をもつ。…
※「最上川」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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