山脈の境界についての定説はなく,広義には山形,新潟,福島,群馬,長野の5県にまたがる脊梁山脈を指すが,狭義には阿賀野川以北の朝日山地,飯豊(いいで)山地(飯豊山)を分離し,西は新発田(しばた)-小出地質構造線,東は大川,伊南川によって区分する。南の三国山脈との境界は不明瞭であるが,山地の標高,連続性を手掛りとすると,只見川とその支流北ノ又川,枝折(しおり)峠,佐梨川とを結ぶ線によって,利根川源流の山地と越後三山とを分離する。したがって,狭義の越後山脈は,新潟・福島県境付近の標高約600~2100mの山地ということになる。
山地は古生代の堆積岩類,中生代の花コウ岩類,新第三紀の緑色凝灰岩およびこれらを基盤として噴出した第四紀火山岩類から構成されている。おもな山地列は脊梁山脈とほぼ平行して走り,南から北へ向かって徐々に高度を下げる。南部に標高2100~1500mの駒ヶ岳(福島県,2133m),未丈ヶ岳(1553m),毛猛(けもう)山,中央部に更新世前半の噴出と考えられる浅草岳(1585m),守門(すもん)岳(1537m)の火山群がある。北部ではやや高度を下げ1300~700mの駒形山,矢筈岳,粟ヶ岳(1293m),日本平山(1081m)の西部の山地列と,貉(むじな)ガ森山,御神楽(みかぐら)岳(1386m),土埋(つちうめ)山の東部の山地列とに分岐する。
山地の特徴は,世界有数の豪雪地域にあたるため斜面が雪崩によって磨かれ,著しく直線的で急峻であること,晩夏まで深い谷底に残雪がみられ,その一部が越年性雪渓となることである。西部の破間(あぶるま)川,刈谷田川,五十嵐川,加茂川が北西流し,北部・東部の早出川,常浪(とこなみ)川,只見川などが北北東流し,いずれも深い浸食谷を形成している。水量豊かな河川には,1955年以降電源開発によって黒又川第1および第2ダム,田子倉ダム,奥只見ダムなど日本を代表する大型ダムが建設された。山脈中央部を横断する六十里越・八十里越は,越後と会津を結ぶかつての重要なルートであり,現在はJR只見線(1971全通),国道252号線がそれに代わっている。
執筆者:鈴木 郁夫
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新潟県と山形・福島・群馬3県の県境を北東―南西に走る脊梁(せきりょう)山脈。南西部は三国(みくに)山脈に接続する。その主軸は東北日本を構成する大八洲(おおやしま)造山帯の古期褶曲(しゅうきょく)帯に属する出羽(でわ)山地の延長で、山体は秩父(ちちぶ)中・古生層に貫入した花崗(かこう)岩類や閃緑(せんりょく)岩からなり、第三紀鮮新世直後の激しい地盤運動を受けて隆起し、山頂部は花崗岩類の壮年期的侵食によって、峻険(しゅんけん)な山容を呈している。北部は大朝日岳(1871メートル)を中心とする朝日山地と、葡萄山地(ぶどうさんち)(蒲萄山地(ぶどうさんち))が並列し、その間に三面盆地(みおもてぼんち)などの山間盆地が発達する。その南には荒川峡を隔てて、飯豊(いいで)山(2105メートル)、大日(だいにち)岳(2128メートル)、二王子(におうじ)岳(1420メートル)などの分派する雄大な飯豊山地が続き、東北型山岳美の山容を誇り、磐梯朝日国立公園(ばんだいあさひこくりつこうえん)地区に指定されている。その前山をなす第三紀の櫛形丘陵(くしがたきゅうりょう)、五頭丘陵(ごずきゅうりょう)は新潟県の胎内(たいない)二王子県立自然公園、五頭連峰県立自然公園に指定されている。さらに阿賀野(あがの)川を越えて東蒲原(ひがしかんばら)郡に入ると、粟(あわ)ヶ岳(1293メートル)、駒形(こまがた)山(1072メートル)などを主峰とする駒形山地が続き、新潟県の奥早出粟守門(おくはやであわすもん)県立自然公園に指定されている。南端は守門岳(1537メートル)、浅草岳(1585メートル)などの鳥海火山群(ちょうかいかざんぐん)と、八海(はっかい)山(1778メートル)、中ノ岳(2085メートル)、駒ヶ岳(2003メートル)などの連なる越後三山、および荒沢(あらさわ)岳(1969メートル)、平(ひら)ヶ岳(2141メートル)などの県境山地で構成される銀山山地(ぎんざんさんち)が国有林樹海をなし、越後三山只見国定公園(えちごさんざんただみこくていこうえん)に指定されている。かかる2000メートル級の山容と、峡谷美は最大観光資源であるとともに、反面、東西交通の大きな障害となり、わずかに雷(いかずち)峠、鳥井峠、八十里越(ごえ)、六十里越などの古い峠越えが他県への通り道になっている。また、奥三面、大白川などの奥地落人(おちゅうど)伝説村もある。
[山崎久雄]
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