次世代医療基盤法(読み)ジセダイイリョウキバンホウ

デジタル大辞泉 「次世代医療基盤法」の意味・読み・例文・類語

じせだいいりょう‐きばんほう〔ジセダイイレウキバンハフ〕【次世代医療基盤法】

《「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律」の通称個人識別できないように医療情報を加工する事業者認定や、そうした医療情報の取り扱いに関する規則等を定めることにより、健康・医療に関する先端的研究開発や新産業の創出を促進することを目的とする法律。平成30年(2018)施行

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「次世代医療基盤法」の意味・わかりやすい解説

次世代医療基盤法
じせだいいりょうきばんほう

個人の権利利益の保護に配慮しつつ、匿名加工された医療情報を安心して円滑に利活用することが可能な仕組みを整備するための法律。正式名称「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律」(平成29年法律第28号)。2017年(平成29)5月公布、2018年5月施行。医療ビッグデータ法とよばれることもある。

[前田幸宏 2019年11月20日]

法律の内容

この法律は、デジタルデータを利用した医療分野の研究、医療システム、医療行政を実現するための基盤として、医療現場から、医療のアウトカム成果)を含む多様なデータを大規模に収集し、利活用する仕組みを設けるためのものである。このような仕組みは次世代医療の基盤と考えられることから、「次世代医療基盤法」という略称が使われている。

 この法律は、医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関し、匿名加工医療情報作成事業を行う者の認定、医療情報および匿名加工医療情報等の取扱いに関する規制等を定めることにより、健康・医療に関する先端的研究開発および新産業創出を促進し、もって健康長寿社会の形成に資することを目的としている。この制度の確立により、個人情報保護の法律の枠組みにかかわらない統一的な条件のもとで医療情報の第三者提供が認められることとなった。

 国民患者視点からみると、自らの医療情報の院外提供を許可し、それが匿名加工医療情報として利活用されることにより医療分野の研究開発が促進され、その成果が医療の現場に還元されることを通じ、長期的には自らが受ける医療の進歩というかたちで、国民多数の恩恵に結び付くとされている。なお、医療機関等による医療情報の提供先は、厳格な基準(情報セキュリティ等)で国の認定を受けた事業者に限定されており、また、認定事業者から利活用者へ提供される情報は、特定の個人を識別できないように匿名加工された医療情報であるなど、情報漏洩(ろうえい)防止への対策も整えられている。

 医療機関からみると、医療情報の提供にあたっては、オプトイン(本人の同意を得ること)によらなくても、ていねいなオプトアウト(最初の受診時における書面での通知を基本とすること)により可能となった。また、医療情報の提供にあたっては、法令に基づくものであり研究倫理指針の適用が除外されるため、倫理審査委員会の承認が不要である。識別可能な情報により、本人に差別や偏見等の不利益が生じない措置を講じたうえで、今後の医療ビッグデータの活用が期待される。

[前田幸宏 2019年11月20日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

知恵蔵 「次世代医療基盤法」の解説

次世代医療基盤法

医療ビッグデータ法」のページをご覧ください。

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

今日のキーワード

潮力発電

潮の干満の差の大きい所で、満潮時に蓄えた海水を干潮時に放流し、水力発電と同じ原理でタービンを回す発電方式。潮汐ちょうせき発電。...

潮力発電の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android