犯罪による死かどうか分からない場合でも、裁判所の令状や遺族の承諾なしに死体を解剖できると規定した法律。正称は「警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律」。平成24年法律第34号。高齢化や独居の増加で死因不明の遺体が増えるなか、犯罪死の見落としを防ぐ目的で2013年(平成25)4月に施行された。本法では、警察等(警察および海上保安庁)が取り扱う死体について、明らかな病死以外の死体の死因究明や身元確認は警察署長の義務であると明記。警察等が扱う死体について、調査、検査、解剖などで死因や身元を明らかにするための実務を定めている。明確な犯罪性がうかがえない死体でも、警察署長や海上保安部長らが法医学者の意見を踏まえて死因を明らかにする必要があると判断した場合、遺族への事前説明があれば、その承諾なしに解剖できる。本法に基づく解剖を新法解剖とよび、費用は公費で、おおむね国と都道府県が半分ずつ負担する。また薬・毒物検査や画像診断が可能なほか、血液や体液、DNA鑑定に使う歯、骨なども採取できる。
通常、警察等が扱う死体は、事件性が疑われる場合、裁判所の令状に基づいて司法解剖される。しかし、犯罪死の見落とし事例が相次いで発覚したことから、死因究明制度を抜本的に改めるべきだとの機運が高まった。これを受け、超党派の議員立法として、2012年6月、新たな死因究明制度の基本理念や体制整備の進め方を定めた「死因究明推進法」とともに、本法が成立した。
2011年時点で、日本の警察等が扱う死体の解剖率は約11%で、スウェーデン(約90%)、オーストラリア(約54%)、イギリス(約46%)などに比べきわめて低い。警察庁は本法施行で日本の解剖率を20%へ引き上げ、犯罪死の見逃し防止を目ざしている。しかし法医学者や技術者などの人員や予算の不足で、本法施行後の2014年時点の解剖率は11.7%にとどまっている。
[編集部 2015年10月20日]
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