母性愛(読み)ボセイアイ(その他表記)maternal affection

デジタル大辞泉 「母性愛」の意味・読み・例文・類語

ぼせい‐あい【母性愛】

母親としての子供に対する本能的な愛情。⇔父性愛
[類語]親心父性愛

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精選版 日本国語大辞典 「母性愛」の意味・読み・例文・類語

ぼせい‐あい【母性愛】

  1. 〘 名詞 〙 母親が子どもに対して持つ本能的な愛情。
    1. [初出の実例]「母性愛を知らない圭一郎には」(出典:業苦(1928)〈嘉村礒多〉)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「母性愛」の意味・わかりやすい解説

母性愛
ぼせいあい
maternal affection

母親が自分の子供に対して強い愛着attachmentを示すことを母性愛という。母性愛は、子供を養育するうえでみられる一連の母親としての行動、すなわち母性的行動のなかで愛着的な行動と関係すると考えられる。新生児期、乳幼児期に母子相互で健全な愛着関係を形成することは、子供の情緒や対人関係の良好な発達にとっての必要条件であり、この期の愛着の様相が発達上の重要なポイントになっている。新生児、乳幼児との愛着行動には母子相互の微笑発声、母親の接触、見つめ合いなどがある。

 子供に対する母親の愛着を形成するうえで重要な要因には、生後まもない間に子供と親密に接触すること、子供の側からの微笑や発声などの合図が必要なこと、愛着と分離とを同時には経験できないこと、などが指摘されている。さらに母子間で一定量以上相互のやりとりを行うことは不可欠であり、そのやりとりも、受容的な態度で、積極的に楽しみながら行うことが重要である。

 なお、母性愛は時代とともにいろいろなとらえ方が生じてきており、2000年ごろより母性愛を強調することの弊害を指摘する論もある。

[岸 学]

『J・ボウルビィ著、黒田実郎・大羽蓁・岡田洋子訳『母子関係の理論1 愛着行動』(1976・岩崎学術出版社)』『M・H・クラウス、J・H・ケネル著、竹内徹・柏木哲夫訳『母と子のきずな』(1979・医学書院)』『永野重史・依田明編『母と子の出会い』(1983・新曜社)』『大日向雅美著『母性愛神話の罠』(2000・日本評論社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「母性愛」の意味・わかりやすい解説

母性愛
ぼせいあい
maternal love

母親が自分の子供に対していだく強い愛着。子供を養育するうえでの母親の一連の行動(母性的行動)のうち愛着的行動,すなわち母親が乳幼児に示す母性的愛撫(ほおずり,あやすなどの親密なスキンシップなど。マザリング)をさす。こうした行動が,情緒面や対人関係における子供の良好な発達に必要とされる。1950年代にイギリスの精神科医ジョン・W.ボウルビーが行なった施設病ホスピタリズム)研究によって,母性愛は先天的に女性に備わっているものと受け止められている。病院や施設に収容された乳幼児にみられる無気力,無関心などの症候群が,母性的養育の欠如によるとの報告が,この説への科学的な根拠を与えた。しかし,文化人類学では,母性愛がみられない民族が紹介され,社会史では,母性愛と呼ばれる情緒は近代家族の産物にほかならないことが実証されてきた。さらに心理学では,人格形成の過程で発達するものととらえられている。近年は,母性愛に代わって対児感情ということばが提唱されている。

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世界大百科事典(旧版)内の母性愛の言及

【愛】より

… 〈愛〉は,母親の幼児にいだく〈せつない愛情〉が自然な発語として定着したもので,少なくとも中古以後は,〈ai〉という二重母音が,完全に一体ではありえないが別個の存在というにはあまりにも不可分な,母子関係の緊密さを,潜在意識に感じさせていたと憶測される。〈母性愛〉のあらわれであるから,〈与える愛・いつくしみ〉が本義である。 これに対して,ラテン語〈amor(イタリア語amore,フランス語amour,スペイン語amor)〉は,幼児が母の〈乳房〉を慕う際の発声が起源で,ラテン語〈mamma(乳房)〉,日本語〈mamma(食物)〉,日本語と朝鮮語の〈omo(母)〉と同じく,もっとも発声が容易でしかも吸着行為の口の動きと密接な,両唇音を主体としている。…

※「母性愛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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