氏上(読み)うじのかみ

改訂新版 世界大百科事典 「氏上」の意味・わかりやすい解説

氏上 (うじのかみ)

日本古代首長氏長氏宗ともいわれ,氏を代表して朝政に参与し,その政治的地位によって,氏・姓(かばね)が決定された。大化前代において,氏の首長は氏人をひきい,氏に隷属する民部・部曲(かきべ)を管理し,彼らよりミツギ(調),エタチ(役)を徴収し,その一部を朝廷におさめ,また朝廷における官職を分掌した。しかし,実際に〈氏上〉の語が史上にあらわれるのは,大化改新後の,664年(天智3)に,大氏・小氏・伴造(とものみやつこ)の氏を定め,それぞれ氏上に大刀・小刀・干楯弓矢を賜ったときで,それにひきいられる氏人の範囲も定められた。これから氏上の地位は,官位の高さによって定められるのが通例となった。律令では,継嗣令に,氏宗は勅によって定めるとし,喪葬令には,三位以上と氏宗は墓を営むことを許すとされた。そのほか,氏上は氏の共有財産である氏賤を管理し,氏人をひきい氏神祭祀を行った。平安時代に氏上は氏長者うじちようじや)とよばれ,中でも藤原氏の氏長者はもっとも有名である。
氏人
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百科事典マイペディア 「氏上」の意味・わかりやすい解説

氏上【うじのかみ】

日本古代の氏の首長。氏長(うじのおさ)・氏宗(しそう)とも。大化(たいか)前代,氏人を統率し,土地と氏に隷属する部民(べみん)を管理し,氏を代表して朝政に参与して氏・姓(かばね)を与えられた。従来私的なものだったが,大化後に大氏・小氏・伴造(とものみやつこ)の氏を定め,それぞれ氏上に大刀・小刀などを与えるなどと,公的に氏上を通じて諸氏族の秩序づけがなされた。律令時代には氏人中,官位第一のものが氏上と認定され,三位以上に準じて墓を営むことが許された。なお一貫して氏神の祭祀を行った。平安時代には氏長者と称された。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「氏上」の解説

氏上
うじのかみ

氏長とも。古代の氏の統率者。大宝令で氏上,養老令では氏宗と表記。古訓はコノカミ。7世紀後半に制度化され,664年(天智3)の大氏・小氏の氏上が史料上の初見。氏人が定めて官に提出し,勅によって認定された。氏を代表して朝廷に仕え,氏人の統率,氏神の祭祀,共有財産である氏賤(うじやっこ)の管理,氏女(うじめ)の貢上,改姓申請,氏人の範囲の確定などを機能としてもっていた。平安時代には氏長者(うじのちょうじゃ)といわれるようになる。

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旺文社日本史事典 三訂版 「氏上」の解説

氏上
うじのかみ

古代における氏の首長
平安時代以後は氏長者 (うじのちようじや) と呼ばれた。氏の統率者。氏を代表して大和政権に仕え,その職掌・政治的地位を世襲。氏神を祭り,氏人を統率し,部民 (べのたみ) 以下隷属民を支配した。大化の改新以後,土地・人民の支配権,職業の世襲権を失ったが,律令国家官吏として要職を占めて国政に参与し,また多くの特権も公認された。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「氏上」の意味・わかりやすい解説

氏上
うじのかみ

古代の氏の首長。平安時代以降の氏長者にあたる。氏神の祭祀を司り,氏人を統率して朝廷に仕え,政治的地位や職務を世襲した。大化改新以後は私的支配権,世襲職を失ったが,社会的地位は律令機構内でも重きをなした。

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世界大百科事典(旧版)内の氏上の言及

【氏】より

… 氏の組織は,大化改新によって変革された。氏の官職の世襲と,私的領有制は廃止され,氏上(うじのかみ)以下の個人を対象とする官位・官職と,それにもとづく俸禄制にきりかえられた。しかし,全体としてみれば,氏族制は,官位を媒介にして官僚制に編成がえされた。…

【氏人】より

…日本古代における氏の構成員。同種のことばに,〈うから,やから〉(族)があるが,これが血縁的社会的な氏族共同体の族員をさすのに対して,〈うじびと〉は,政治制度としての氏の構成員で,氏上(うじのかみ)にひきいられる一定範囲の人々をさし,氏上とおなじ氏姓を称する。允恭天皇のとき,盟神探湯(くかたち)によって,氏姓の乱れを正したというが,実際に氏人の範囲を法的に定めたのは,664年(天智3)大氏・小氏・伴造の氏を定め,これによって670年,庚午年籍(こうごねんじやく)を作成したときからであり,これによって氏上とそれにひきいられる氏人の範囲が登録された。…

【相続】より

…〈家之名〉を継ぐことは〈祖名(おやのな)〉を継ぐことと同義であり,〈氏門(うじかど)〉を継ぐことであった。その氏上の地位は,嫡系継承の適用外たることが継嗣令に規定されており,実際の例についてみても,族長的地位の継承はかなりに広い範囲での傍系継承である。また庶人については,戸籍に嫡子注記があり,次代の戸主には嫡子をあてるというのが当時の法解釈である。…

※「氏上」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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