日本古代における氏の構成員。同種のことばに,〈うから,やから〉(族)があるが,これが血縁的社会的な氏族共同体の族員をさすのに対して,〈うじびと〉は,政治制度としての氏の構成員で,氏上(うじのかみ)にひきいられる一定範囲の人々をさし,氏上とおなじ氏姓を称する。允恭天皇のとき,盟神探湯(くかたち)によって,氏姓の乱れを正したというが,実際に氏人の範囲を法的に定めたのは,664年(天智3)大氏・小氏・伴造の氏を定め,これによって670年,庚午年籍(こうごねんじやく)を作成したときからであり,これによって氏上とそれにひきいられる氏人の範囲が登録された。その後の氏人は,氏上の直系の親族を中心に,若干の傍系の同族を加える程度に限定されたといってよく,これが同一の氏姓を称した。ただし,東漢(やまとのあや)氏において,坂上・書など数十氏が同族の檜前忌寸(ひのくまのいみき)を構成し,和珥(わに)氏において,小野・粟田・春日などの諸氏が同系の氏族となり,氏寺・氏神の祭祀を行ったように,広い意味で氏人という語を用いることもある。
→氏
執筆者:平野 邦雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
氏を構成する人。古くは氏々人・氏氏名名人といわれ,世襲の職掌をもって朝廷に奉仕する人を意味した。氏人の称は奈良時代以後にみられ,平安時代にはおもに氏神の祭にあずかる範囲の人々をいい,さらには神職をさすようにもなった。中世以降の鎮守すなわち氏神を祭る集団は氏人ではなく氏子(うじこ)という。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
…こんにち神社神道では信者に相当する総称として〈氏子〉を用いるが,狭意には各神社の慣習的な祭祀圏を〈氏子場〉ないし氏子区域と称し,その圏内の居住者を〈氏子〉,圏外からの信者を〈崇敬者〉と呼ぶ。本来,氏神と氏子の関係は古代社会における氏族集団の成員(氏人(うじびと))とその守護神(氏の神)に由来し,中世以来の氏族制社会の崩壊と郷村制社会の成立発展に即してその意味内容が変化したものである。文献上,氏族祭祀は《続日本紀》和銅7年(714)2月の条に初見があり,大倭忌寸(やまとのいみき)が〈氏上〉(族長)として神祭を命ぜられているが,記紀神話その他の古典からして,少なくとも古墳時代以来の氏族祭祀は推定できる。…
※「氏人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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