化学式NH4OHで表される。しかしこの化学式をもつ化合物は水溶液の中でのみ存在すると,長い間,記述されていたが,アンモニア水の中にこの式に対応する水酸化物の存在することは確認されていない。また,低温でアンモニア水からNH3・H2Oの組成をもつ無色六方晶系,融点-79.01℃の結晶が得られているが,赤外スペクトルなどによってこの結晶中にNH4⁺イオンの存在することは否定されており,この結晶は水酸化アンモニウムNH4OHではない。
アンモニア水が弱いアルカリ性を示すのは,
NH3+nH2O⇄[NH3(H2O)n-1H2O]⇄NH4⁺+OH⁻+(n-1)H2O
のように,溶媒分子(酸としてのH2O)と,溶質分子(塩基としてのNH3)との間には溶媒H2O分子が仲介する分子間水素結合を通して,きわめて速いプロトン移行(いわゆるNH3の加水分解)が起こり,微量のOH⁻イオンを生ずることによる。しかしながら,酸塩基平衡を量的に論ずる場合には,便宜上NH4OHの水溶液として取り扱ってもなんら差支えのないことが多い。アンモニア水中の溶存アンモニアの全量を基準とする見かけの塩基解離定数は,25℃で1.75×10⁻5mol/dm3と著しく小さく,見かけ上は典型的な弱塩基である(この値は典型的弱酸である酢酸CH3COOHの酸解離定数の値とほぼ等しい)が,アンモニア水和物を基準に考えるときは,かなり強い塩基性に対応すると見なすべきである。
→アンモニア →アンモニア水
執筆者:藤本 昌利
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
化学式NH4OHで表される化合物で、アンモニアNH3の水溶液が弱アルカリ性(弱塩基性)を呈することを説明するために、その存在が仮定されてきた。すなわち、古典的な酸塩基の定義に従えば、塩基として働く物質は電離可能なヒドロキシ基-OHをもたなければならないことになるので、次のような一連の平衡が考えられた。
NH3+H2ONH4OH
NH4++OH-
確かに、NH3・H2Oの組成をもつ無色の結晶が単離されているが、これは水分子とアンモニア分子が水素結合で連なる構造をもっており、NH4OHのような分子は存在していないし、またNH4+やOH-のようなイオンもこの結晶中には存在しない。さらに水溶液中ではアンモニア分子と水分子との間でH+イオンの直接授受が行われているという実験的証拠も得られている。いずれにしても水酸化アンモニウムという化学種は固体でも溶液中でもその実在が確認されない。アンモニアの挙動は
NH3+H2ONH4++OH-
という平衡だけで十分に説明できる。
[鳥居泰男]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
個々の企業が新事業を始める場合に、なんらかの規制に該当するかどうかを事前に確認できる制度。2014年(平成26)施行の産業競争力強化法に基づき導入された。企業ごとに事業所管省庁へ申請し、関係省庁と調整...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新