水酸化アンモニウム(読み)スイサンカアンモニウム(英語表記)ammonium hydroxide

デジタル大辞泉 「水酸化アンモニウム」の意味・読み・例文・類語

すいさんか‐アンモニウム〔スイサンクワ‐〕【水酸化アンモニウム】

アンモニアが水に溶けると弱アルカリ性を呈することから、存在すると仮定された化合物化学式NH4OH

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精選版 日本国語大辞典 「水酸化アンモニウム」の意味・読み・例文・類語

すいさんか‐アンモニウムスイサンクヮ‥【水酸化アンモニウム】

  1. 〘 名詞 〙 ( アンモニウムは[ラテン語] ammonium ) アンモニア水中に存在すると考えられる物質。化学式は NH4OH アンモニア水がアルカリ性を示すのはこれが電離するためである。加熱するとアンモニアと水に分かれるため、水溶液として存在するだけとされている。

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改訂新版 世界大百科事典 「水酸化アンモニウム」の意味・わかりやすい解説

水酸化アンモニウム (すいさんかアンモニウム)
ammonium hydroxide

化学式NH4OHで表される。しかしこの化学式をもつ化合物は水溶液の中でのみ存在すると,長い間,記述されていたが,アンモニア水の中にこの式に対応する水酸化物の存在することは確認されていない。また,低温でアンモニア水からNH3・H2Oの組成をもつ無色六方晶系,融点-79.01℃の結晶が得られているが,赤外スペクトルなどによってこの結晶中にNH4イオンの存在することは否定されており,この結晶は水酸化アンモニウムNH4OHではない。

 アンモニア水が弱いアルカリ性を示すのは,

 NH3nH2O⇄[NH3(H2O)n-1H2O]⇄NH4⁺+OH⁻+(n-1)H2O

のように,溶媒分子(酸としてのH2O)と,溶質分子(塩基としてのNH3)との間には溶媒H2O分子が仲介する分子間水素結合を通して,きわめて速いプロトン移行(いわゆるNH3加水分解)が起こり,微量のOH⁻イオンを生ずることによる。しかしながら,酸塩基平衡を量的に論ずる場合には,便宜上NH4OHの水溶液として取り扱ってもなんら差支えのないことが多い。アンモニア水中の溶存アンモニアの全量基準とする見かけの塩基解離定数は,25℃で1.75×10⁻5mol/dm3と著しく小さく,見かけ上は典型的な弱塩基である(この値は典型的弱酸である酢酸CH3COOHの酸解離定数の値とほぼ等しい)が,アンモニア水和物を基準に考えるときは,かなり強い塩基性に対応すると見なすべきである。
アンモニア →アンモニア水
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「水酸化アンモニウム」の意味・わかりやすい解説

水酸化アンモニウム
すいさんかあんもにうむ
ammonium hydroxide

化学式NH4OHで表される化合物で、アンモニアNH3の水溶液が弱アルカリ性(弱塩基性)を呈することを説明するために、その存在が仮定されてきた。すなわち、古典的な酸塩基の定義に従えば、塩基として働く物質は電離可能なヒドロキシ基-OHをもたなければならないことになるので、次のような一連平衡が考えられた。

  NH3+H2ONH4OH
   NH4++OH-
確かに、NH3・H2Oの組成をもつ無色の結晶が単離されているが、これは水分子とアンモニア分子が水素結合で連なる構造をもっており、NH4OHのような分子は存在していないし、またNH4+やOH-のようなイオンもこの結晶中には存在しない。さらに水溶液中ではアンモニア分子と水分子との間でH+イオンの直接授受が行われているという実験的証拠も得られている。いずれにしても水酸化アンモニウムという化学種は固体でも溶液中でもその実在が確認されない。アンモニアの挙動
  NH3+H2ONH4++OH-
という平衡だけで十分に説明できる。

[鳥居泰男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「水酸化アンモニウム」の意味・わかりやすい解説

水酸化アンモニウム
すいさんかアンモニウム
ammonium hydroxide

便宜上,化学式は NH4OH と記述されるが,この式に相当する未解離の化合物は遊離の形で取出されていない。アンモニア水中に存在するとされるが,アンモニア水のアルカリ性はアンモニア NH3 の加水分解によって説明されるので,水酸化アンモニウムの存在を考える必要はない。したがって最近では,アンモニア水の化学式を NH4OH とは書かずに,NH3aq (aqは水のこと) と書くことが多い。化学用試薬,医薬 (外用薬として局所刺激剤,興奮剤,制酸剤,中和剤など) ,衣類のしみ抜き,毛織物の洗濯用に使われる。

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百科事典マイペディア 「水酸化アンモニウム」の意味・わかりやすい解説

水酸化アンモニウム【すいさんかアンモニウム】

アンモニア水の示すアルカリ性を説明するために,水溶液中に存在すると考えられた塩基NH4OH。実際には溶液中でNH4(+/)+OH(-/)のかたちで存在すると考えられる。

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栄養・生化学辞典 「水酸化アンモニウム」の解説

水酸化アンモニウム

 NH4OH (mw35.05).特有の臭気を有する気体であるアンモニアが水に溶けた形の化合物でアルカリ性を示す.

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化学辞典 第2版 「水酸化アンモニウム」の解説

水酸化アンモニウム
スイサンカアンモニウム
ammonium hydroxide

[別用語参照]アンモニア

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