江戸中期の漢詩人。京都の人。名は綬,字は君錫,通称は伝左衛門,北海は号。儒者伊藤竜洲の次男に生まれ,京都の儒家の名門であった江村家の養子となった。兄の伊藤錦里,弟の清田儋叟(せいだたんそう)とともに学者3兄弟として知られる。伊藤家も江村家も家学は朱子学であったが,朱子学を強く宣布するという家風ではなく,北海も養父のあとをついで美濃郡上藩の儒官にはなったが,その活動は儒学よりも漢詩文に傾斜していた。それも詩文の実作にすぐれた才能を示したわけではなく,家塾の賜杖堂(しじようどう)において多くの門人に詩文を教授し,また上代から当代までの漢詩史《日本詩史》(1771)を著し,当時の人々の漢詩を広く採集した《日本詩選》(1774)を編纂するなどの,啓蒙・著述の活動に本領があり,上方に漢詩文が普及するうえで大きな役割を果たした。漢学入門の手引書《授業編》(1783)など,他にも多くの著述がある。
執筆者:日野 竜夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
江戸中期の儒学者、漢詩人。名は綬(じゅ)、字(あざな)は君錫。京都の人。儒学者伊藤龍洲(いとうりゅうしゅう)(1683―1755)の二男で、同じ京都儒学界の名門江村氏を継いだ。兄の伊藤錦里(きんり)(1710―1772)、弟の清田儋叟(せいたたんそう)(1719―1785)とともに俊才として聞こえた。学統は朱子学で、独自の見識には乏しいが、穏健な学風で多くの門人を育てた。詩文にも関心が深く、当時の漢詩壇では盛唐詩の模倣に徹する古文辞派の詩風が有力であったが、これの行き過ぎを是正する立場から『日本詩史』『日本詩選』を著し、漢詩を日本の風土に定着させるのに功績があった。
[日野龍夫 2016年4月18日]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報
※「江村北海」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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