江津(市)(読み)ごうつ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「江津(市)」の意味・わかりやすい解説

江津(市)
ごうつ

島根県中北部、日本海に面する江の川(ごうのかわ)(江川(ごうがわ))河口の工業都市。1954年(昭和29)江津、都野津(つのづ)の2町、川波(かわなみ)、二宮(にのみや)、跡市(あといち)、浅利(あさり)、松川、川平(かわひら)、江東の7村が合併して市制施行。2004年(平成16)邑智(おおち)郡桜江町(さくらえちょう)を編入。海岸は江の川の沖積地を中心に広い砂丘を形成。内陸部には石見(いわみ)高原が広がる。JRの山陰本線および国道9号、261号の分岐点となっており、国道9号に並行して山陰自動車道が通じる。江津駅を起点とするJR三江(さんこう)線が通じていたが、2018年に廃線となった。古来、日本海と江の川の結節点で、江川舟運の下り船の鉄、木材、薪炭、コウゾ、上り船の米、塩、海産物などの集散地となり、河岸には廻船(かいせん)問屋、倉庫が立ち並び繁栄した。昭和初年、鉄道の開通後、江川舟運は衰退し駅前に新市街が成立した。都野津地区は石見瓦(いわみがわら)の産地。1942年(昭和17)以降、砂丘地に製糸パルプ、化学などの工場が進出し工業都市への基盤ができた。松川町に江津工業団地が造成されている。旧桜江町域は古代の桜井郷、中世の桜井荘(しょう)の地で、室町時代には江川舟運を利用した対朝鮮貿易の要津(ようしん)として川湊桜井津(さくらいのつ)の繁栄をみた。チャ、タバコ、ゴボウ、シイタケ栽培が盛ん。江の川支流の八戸(やと)川には多目的の八戸ダムがあり、近くに国指定名勝千丈渓(せんじょうけい)がある。甘南備寺(かんなみじ)の黄櫨匂威大鎧残闕(はじにおいおどしおおよろいざんけつ)は国指定重要文化財である。市西部の「山陰の伊香保」と称される有福(ありふく)温泉には原爆被爆者療養研究所があった(2013年閉所)。桜江町地区の大元神楽(おおもとかぐら)は国の重要無形民俗文化財。面積268.24平方キロメートル、人口2万2958(2020)。

[石橋忠男]

『『江津市の地誌』(1971・報光社)』『『江津市誌』3冊(1982・江津市)』


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