決・極(読み)きまり

精選版 日本国語大辞典 「決・極」の意味・読み・例文・類語

きまり【決・極】

〘名〙 (動詞「きまる(決)」の連用形名詞化)
① 決定。決着。
当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉六「それぢゃア確定(キマリ)だ」
② きちんとしていること。秩序。しまり。
滑稽本・風来六部集(1780)里のをだ巻評「遊の節々に極(キマリ)なければ」
規則。制度。
開化のはなし(1879)〈辻弘想〉初「又、地券の御制度(キマリ)を設けられしも」
④ 一定していること。いつもそうであること。定例。
※咄本・聞上手二篇(1773)染の介「貴様ははでな表具でどこへいき給ふ、きまりの御筋か」
⑤ 一定の額。
※付焼刃(1905)〈幸田露伴〉一「定額(キマリ)だけ進(あ)げて置いた上はもう進げられません」
⑥ きまり文句。
真景累ケ淵(1869頃)〈三遊亭円朝〉二〇「善六さん極(キマ)りを云ってらア」
⑦ (「きまりがわるい」「きまりのわるい」の形で用いることが多い) 他人に対する気持。面目。
浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一「気まりを悪がって口数をきかず」
⑧ 客と遊女が恋に陥ること。色事が成立すること。
※咄本・くだ巻(1777)客の噂「今夜のぬしの客衆は飛んだきまりだの」
⑨ 物事がきちんと思い通りにまとまること。「しめた」「うまい」の気持で感動詞のように用いることもある。明和・安永(一七六四‐八一)頃の流行語
洒落本・辰巳之園(1770)「ヲヲ、きまり。粋(すひ)め。重さんどうでも、はだしじゃはだしじゃ」

きま・る【決・極】

〘自ラ五(四)〙
① 物事がある状態に定まって、変わらないようになる。決定する。決着がつく。
※黄表紙・心学早染艸(1790)中「コレサ、そんなきまらぬ事をいいっこなしさ」
※疑惑(1913)〈近松秋江〉「定(キマ)った収入のない上に」
② (「…にきまっている」の形で用いる) 当然である。きっと…である。
多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉前「叱られるに極ってゐるから」
態度や服装などがきちんとする。かしこまる。
歌舞伎・東海道四谷怪談(1825)序幕「羽織で極まって来ずともの事だ」
※吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉七「君は夏でも御苦労千万に二枚重ねで乙に極まって居る」
④ 物の型などがきちんとかっこうよくできる。ぴたりとはまる。
※咄本・さとすゞめ(1777)初鰹「さしみにして一ぱいきまろふとおもった所が」
⑤ 歌舞伎の演技や踊りなどで、最高潮に達したり、一区切りついたりしたとき、演者が動きを一瞬停止して、形をつける。
※歌舞伎・助六廓夜桜(1779)「唄一ぱいによろしく極る」
⑥ 相撲、柔道、剣道などで、しかけたわざが相手にうまくかかる。勝負がきまる。
野球で、投手の投げたボールが思ったところに行く。
男女の仲がうまく成立する。安永~天明一七七二‐八九)頃の江戸の流行語。
※浄瑠璃・神霊矢口渡(1770)四「此六蔵が性根(しゃうね)を見た其上ではきまってくれるといふ腹か」
⑨ きちんと無駄のない仕方である。つつましく暮らす。
※洒落本・北華通情(1794)「かのすひものもげいこへはひとりきてゐてもめったに出しませぬ。あのやふにきまってこそ永久なれ」

き・める【決・極】

〘他マ下一〙 き・む 〘他マ下二〙
① 従うべき規則などをはっきり作る。また、いくつかの中から選んでこれを定める。決定する。決心する。
※漢書列伝竺桃抄(1458‐60)楚元第六「決めた心で云ことぞ」
② 強くとがめる。しかる。また、詰問する。きめつける。
※栄花(1028‐92頃)様々のよろこび「有国・惟仲をば左右の御まなこと仰せられけるをきめられ奉りぬるにやと」
※浄瑠璃・心中重井筒(1707)上「行端(いきは)をきかふときめらるる」
③ 刀や脇差を差す。また、きちんと格好よく身じたくをする。
※洒落本・多佳余宇辞(1780)「はじめて壱(いっ)本きめて見たが、あたまが是じゃア」
④ 飲食する。
※歌舞伎・名歌徳三舛玉垣(1801)四立「手酌できめて取々に、やっつ返しつ飲み廻し」
⑤ 確かめる。確認する。念を押す。
※洒落本・芳深交話(1780)「安く無ひ色事だからきめて見るのさ」
⑥ (「…を決める」の形で) ある行動や態度をする。気取る。きめこむ。
※当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉七「図留(ずる)をきめてしまやアがったんさ」
⑦ 歌舞伎の演技や舞踊で、最高潮に達したり、一区切りついたとき、演者が動きを止めて形をつける。
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前「幸さんに踏(ふめへ)られて居ながらの、ギックリときめねへ」
⑧ 囲碁で、幾つかの手段があって打たないでおいた所を、方針を決めて打ってしまう。
⑨ 相撲などで、相手の関節を逆にとり、動きを封じる。

きめ【決・極】

〘名〙 (動詞「きめる(決)」の連用形の名詞化)
① こうする、こうだと決めた事柄。規定や約束。
※当世商人気質(1886)〈饗庭篁村〉二「町内地主中の極(キ)めにて」
② 約束の日。期限の日。
※浮世草子・世間御旗本容気(1754)三「斯て極(キメ)の頃にもなりければ」

き・む【決・極】

〘他マ下二〙 ⇒きめる(決)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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