沼名前神社(読み)ぬなくまじんじゃ

精選版 日本国語大辞典 「沼名前神社」の意味・読み・例文・類語

ぬなくま‐じんじゃ【沼名前神社】

広島県福山市鞆町後地にある神社。旧国幣小社。祭神は大綿津見命、須佐之男命。神功皇后が熊襲征伐の海路安全を祈って創祀したと伝えられる。現社名祇園社と渡守(わたす)社が合併改称したもの。鞆の祇園さん。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「沼名前神社」の意味・読み・例文・類語

ぬなくま‐じんじゃ【沼名前神社】

広島県福山市にある神社。祭神は大綿津見神おおわたつみのかみ須佐之男命すさのおのみこと。俗称、とも祇園ぎおん社。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本歴史地名大系 「沼名前神社」の解説

沼名前神社
ぬなくまじんじや

[現在地名]福山市鞆町後地

安国あんこく寺の南、祇園南ぎおんみなみにある。祭神大綿津見命・素盞嗚命。旧国幣小社。当社は明治八年(一八七五)祇園社とその境内にあった渡守わたす社が合併し改称したもの。社名は「延喜式」神名帳に沼隈郡小社三座の一としてみえるが、社名は早く失われ、鞆に位置していたかさえ明白な根拠がない。近世にはいるとその考証が行われ、「西備名区」「福山志料」などはこれを渡守大明神(渡守社)にあてている。

渡守大明神は、猿田彦神、船魂命を祭神とし、もと後地平うしろじひら村にあったとも(西備名区)、鞆のせき町にあったともいわれ、慶長年中(一五九六―一六一五)後地原うしろじはら村の祇園社境内に移されたと伝える。明暦年中(一六五五―五八)には藩主水野勝貞が社殿を再建したという(あくた川のまき)

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「沼名前神社」の意味・わかりやすい解説

沼名前神社
ぬなくまじんじゃ

広島県福山市鞆(とも)町に鎮座。大綿津見命(おおわたつみのみこと)、須佐之男命(すさのおのみこと)を祀(まつ)る。社伝によると、仲哀(ちゅうあい)天皇の2年に、神功(じんぐう)皇后が西国へ下向、瀬戸内海を西航したとき、吉備(きび)国南の海辺に停泊して奇瑞(きずい)あり、海中より浮かび出た神石を神璽(しんじ)として斎場を設け、大綿津見神を祀って海上安全を祈念したのが始まりという。沼名前とは泥沼の地に入り江が深く屈曲して隈(くま)をなした地をいい、ここに鎮座した神を社名としたものといえる。『延喜式(えんぎしき)』の小社で、鞆祇園社(とものぎおんしゃ)とよばれ、『備後国風土記(びんごのくにふどき)』の疫隈(えのくま)の社にあてられている。1599年(慶長4)火災にかかり社殿が移転され、のち鞆浦の祇園社の境内に祀られた。1871年(明治4)国幣小社に列せられ、76年当地に祀られていた祇園社の主祭神に渡守明神(わたすみょうじん)が祀られ、祇園社の祭神は相殿(あいどの)の神となって、現在の沼名前神社が成立した。特殊神事として、旧暦6月7日に近い土曜日に御手火(おてび)祭、旧暦1月7日に近い日曜日に御弓(おゆみ)祭が行われる。また、能舞台はもと山城(やましろ)(京都府)伏見(ふしみ)城にあったもので、国の重要文化財に指定されている。

[加藤隆久]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「沼名前神社」の意味・わかりやすい解説

沼名前神社 (ぬなくまじんじゃ)

広島県福山市鞆町後地に鎮座。大綿津見命を主神とし,素佐之男命を配祀する。社伝では神功皇后が西征の途次,この浦に寄り,海中より霊石を得てそれを神璽とし,斎庭(ゆにわ)に神籬(ひもろき)をたてて神璽をかけてまつり,海路安全を祈願,のち浦人に神社をたてそれをまつれといったことに始まるという。延喜の制で小社。本社はもと渡之辻にあり,渡守(わたす)神社とも呼ばれたが,1599年(慶長4)火災ののち,後地の麻之谷に遷座,さらにそれまでに祇園社の存した現社地内に遷座し,明治維新後,国幣小社に列し,その祇園社本殿に主神として奉斎された。一般に鞆(とも)の祇園さんと呼ばれるのはそのためである。例祭5月2日。本殿背後の霊泉は有名。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「沼名前神社」の意味・わかりやすい解説

沼名前神社【ぬなくまじんじゃ】

広島県福山市鞆(とも)町に鎮座。旧国幣小社。綿津見(わたつみ)神と素戔嗚(すさのお)尊をまつる。通称は鞆の祇園(ぎおん)。神功皇后の創祀と伝える。延喜式内社とされる。例祭のほかに御弓神事(旧正月7日),御手火神事(旧6月4日)などがある。漁業・航海の神として信仰される。
→関連項目福山[市]

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

デジタル大辞泉プラス 「沼名前神社」の解説

沼名前(ぬなくま)神社

広島県福山市の鞆(とも)の浦にある神社。延喜式内社。祭神は大綿津見命(おおわたつみのみこと)、須佐之男命(すさのおのみこと)。「鞆祇園宮」「鞆の祇園さん」などとも呼ばれる。国指定重要文化財の能舞台は、かつて京都伏見城にあったもので、国内唯一の組み立て式。

出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「沼名前神社」の意味・わかりやすい解説

沼名前神社
ぬなくまじんじゃ

広島県福山市鞆町後地に鎮座する元国幣小社。鞆祇園宮 (とものぎおんぐう) ともいう。祭神はオオワタツミノミコト。スサノオノミコトを配祀する。例祭5月2日。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android