法の哲学(読み)ほうのてつがく(その他表記)Grundlinien der Philosophie des Rechtsoder Naturrecht und Staatswissenschaft im Grundrisse

改訂新版 世界大百科事典 「法の哲学」の意味・わかりやすい解説

法の哲学 (ほうのてつがく)
Grundlinien der Philosophie des Rechtsoder Naturrecht und Staatswissenschaft im Grundrisse

ヘーゲル主著一つ。1821年刊。《法哲学綱要》とも訳される。本書においてヘーゲルは,社会的諸関係を内的な発展法則(ここでは〈自由な意志〉の自己展開がそれにあたる)に従って体系化し,社会に関する学問を自然科学に比すべき〈学Wissenschaft〉たらしめようとする。ヘーゲルはそのために事柄の内在的な分析と論理的連関解明を進めていくのであり,この結果本書は,近代社会の特質を鋭くとらえた,また近代的自由の体系を明らかにしえた,すぐれた書物となっている。すなわち第1部では人格・所有・契約という近代市民法を構成する三つの要素の連関が明らかにされているが,これは今日の市民法研究においても出発点となる分析である。また第2部では,カントの道徳論の意義と問題点が詳しく考察され,それを超える新しい方向が示される。この新しい方向は次の第3部で具体化される。すなわち,カント的な内面的自由をアリストテレス以来の伝統的な社会制度論と結びつけて〈新しい制度的倫理学〉を打ち立てようという試みである。この第3部における個々の社会制度の分析も重要である。まず第1章は,近代的な家族の特徴を古い〈家〉制度との対比において明らかにし,前者を擁護する。第2章は,近代市民社会の構造矛盾を解明する。それは,アダムスミスの研究を踏まえつつ,これを超える内容をもち,青年期のマルクスにも大きな影響を与えた。さらに第3章は,近代国家のあり方を論じる。ヘーゲルによれば,新しい国家は,国家原理としては国民の自由と国家の強固な統一とを内在的に結びつけねばならず,国制としては,多元主義と君主制を統合しなければならない。ヘーゲルのこのような国家観は,その後のドイツの自由主義思想の先駆をなすものであった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「法の哲学」の意味・わかりやすい解説

法の哲学
ほうのてつがく
Grundlinien der Philosophie des Rechts

ドイツの哲学者 G.W.F.ヘーゲルの主著の一つ。 1821年刊。法の発展を弁証法的に考察し,国家を最高の道義態とする。一般にはプロシア国家を神聖,絶対視する保守的な書とされ,特にマルクスによって徹底的に批判された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「法の哲学」の意味・わかりやすい解説

法の哲学
ほうのてつがく

法哲学

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