明治の流行歌。作詞・作曲者未詳。江戸末期に長崎へ伝わった明清楽(みんしんがく)は、1870年代の後半から日本各地へ広まった。月琴(げっきん)や明笛(みんてき)は若者の間にもてはやされ、これらを伴奏に新しい歌が生まれてくる。なかでも「ホウカイ」を囃子詞(はやしことば)とする曲は、1890年代の初めに『法界節』と名づけられ、大流行した。2、3人ずつが一組となった若者は、月琴や胡弓(こきゅう)を奏でながら流して歩くので、いつのほどにか法界屋とよばれた。日清戦争を境に、明清楽は敵国の音楽だという理由で衰退に向かうが、剣舞をも取り入れた流しは増加する一方で、法界屋は婦女子のあこがれの的となり、流しのあとを追う者が長い列をなしたという。そのため1900年(明治33)のころには、風俗問題や交通妨害が起こってくる。さらに、芸能を愛好する若者が厳しく指弾されたため、法界屋はしだいに姿を消し、『法界節』も運命をともにした。
[倉田喜弘]
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