〈ほっかい〉ともいう。サンスクリットのdharma-dhātu。仏教用語としては種々の意味に用いられるが,もっとも重要なのは大乗仏教における意味である。すなわち,この全宇宙は全存在が互いにおかしあうことなく秩序を保って存在するから,また,全宇宙は正しく真理(法)のあらわれであるから,法界と呼んだ。さらに,このような存在,すなわち全宇宙の現実のありのままの相(すがた)と,全宇宙をしてそのようにあらしめているもの,すなわち真理を意味した。いいかえると,法界は現実界そのものと,真理・真如(しんによ)の両義を含んでいる。この法界はすべてのものが互いに因となり,縁(えん)となって現れているという意味で,〈法界縁起(ほつかいえんぎ)〉が説かれた。上述の意味とは別に,意識の対象となるものを法界(または法境(ほうきよう))ということもある。
執筆者:井ノ口 泰淳
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
仏教用語。サンスクリット語ダルマダートdharmādhātuの訳。(1)諸法の一分界という意。個別な、ものの世界のこと。たとえば「事法界」「十法界」などと使う。(2)意識の対象となるすべてのものという意。十八界の一つ法境のこと。(3)法の根源の意。聖道(しょうどう)を生み(因義)、諸法の根拠となる(性義(しょうぎ))もの(真如(しんにょ))のこと。大乗仏教では、宇宙間の全存在を法(真理)の現れとみて、真如、法身(ほっしん)と同義の語と解する。また、華厳(けごん)教学では、現実のありのままの世界(分義)と、それをそのようにあらしめているもの(性義)との、相即関係を示す場所の意として用いている。(4)決まり、定めの意。因果の理に支配される範囲のこと。
[池田魯參]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…仏教用語としては種々の意味に用いられるが,もっとも重要なのは大乗仏教における意味である。すなわち,この全宇宙は全存在が互いにおかしあうことなく秩序を保って存在するから,また,全宇宙は正しく真理(法)のあらわれであるから,法界と呼んだ。さらに,このような存在,すなわち全宇宙の現実のありのままの相(すがた)と,全宇宙をしてそのようにあらしめているもの,すなわち真理を意味した。…
…供養されることがないのでつねに腹をすかせ,あるいは安らかな死が迎えられず,怨恨をもって迷っているため,たたりやすく,またこの世に害を与えるので,無縁仏には個人または集団でことあるごとにまつる必要があるとされた。中世の霊魂祭祀では,個々の無縁霊がもれないように,総括して法界,三界万霊,無縁一切精霊などと表現していた。民俗用語としては,現今,南九州・南島ではフケジョロ(外精霊),ウケジョロ(浮精霊),ホカドン(外殿),トモドン(供殿)など,紀ノ川沿いではお客ボトケ,兵庫県宍粟郡ではショウロサン(精霊様),岐阜県加茂郡では一切精霊様,壱岐ではサンゲバンゲ(三界万霊)などとよばれている。…
※「法界」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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