( 1 )「万葉集」から「後拾遺集」までは多く冬の景物であったのが、「源氏‐若菜上」では女三宮が「はかなくて上の空にぞ消えぬべき風にただよふ春のあは雪」と、不安定な我身を今にも消えそうなはかない春の淡雪にたとえており、「新古今集」では春の景物に変わっている。その分岐点は「堀河百首」のころで、「沫雪」から「淡雪」への語義内容を膨らませながら季も変化を遂げたらしい。
( 2 )①の「源氏‐行幸」の例は記紀を踏まえた表現なので「沫雪」と解したが、②以下の意には「泡」「淡」が混用されており、便宜的に本項にまとめた。
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