洛陽の紙価を高める(読み)らくようのしかをたかめる

故事成語を知る辞典「洛陽の紙価を高める」の解説

洛陽の紙価を高める

ある書物がもてはやされ、よく売れることのたとえ。

[使用例] 十返舎一九の吉原年中行事にごうして洛陽の紙価を高からしめた時なども[矢田挿雲*江戸から東京へ|1921]

[使用例] 戦争中、洛陽の紙価を高めた本にアンドレ・モロアの「フランス敗れたり」があるが[扇谷正造*鉛筆ぐらし|1951]

[由来] 「晋書ぶんえん伝・」にみえる話から。三世紀、中国の西王朝の時代。左思という文人は、三国時代の三つの都の繁栄を描いた「三都の」という文学作品を、一〇年の歳月をかけて書き上げました。しかし、彼は無名だったため、当時の都、洛陽の人々は相手にしてくれません。そこで、文壇の重鎮たちに序文を書いてもらうと、一気に評価が高まります。さらに、ちょうという大御所が「くり返し読むべき名文だ」と激賞するに及んで、人々はこぞって「三都の賦」を書き写そうとしたため、紙の需要が急増し、「洛陽、これが為に紙たかし(洛陽ではこのために紙の値段が上がった)」ということです。

[解説] ❶紙は、紀元前後には作られていましたが、当時はまだまだ貴重品。文学作品は回し読みされるのが基本で、読者は、これはと思ったものだけを、貴重な紙に書き写して手元に残しました。そういう人があまりに多くて紙の値段が上がったというのは、ちょっとオーバーな気もしますが、「三都の賦」がいかに人気作だったかが、よくわかります。❷左思の時代には、著作がいかに評判になっても、それが収入に直結したわけではなかったでしょう。しかし、出版産業が発達した現在では、著作がベストセラーになって、著者や出版社が大きな利益を上げることを指して、用いられます。

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精選版 日本国語大辞典「洛陽の紙価を高める」の解説

らくよう【洛陽】 の 紙価(しか)を=高(たか)める[=高(たか)からしむ]

(「晉書‐文苑左思伝」にある、左思が「三都賦」を著わした際、人々がこぞってそれを転写したために「洛陽為之紙貴」と書かれた故事から) 著書がもてはやされ、よく売れることのたとえにいう。
※江戸から東京へ(1921)〈矢田挿雲〉七「十返舎一九の吉原年中行事に揮毫して洛陽(ラクヤウ)の紙価(シカ)を高(タカ)からしめた時なども」

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デジタル大辞泉「洛陽の紙価を高める」の解説

洛陽(らくよう)の紙価(しか)を高(たか)める

左思が三都賦(さんとのふ)を作った時、これを写す人が多く、洛陽では紙の値が高くなったという、「晋書」文苑伝にある故事から》著書の評判がよくて売れ行きのよいことのたとえ。
[補説]「市価を高める」と書くのは誤り。

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