江戸時代,幕府の直轄都市で人口などの面でずぬけて規模の大きかった京都,江戸,大坂をいう。元禄期(1688-1704)ころの三都の人口はほぼ35万人前後であったが,同じ幕府の直轄都市堺が約6万,長崎が約5万,また城下町として最大規模の金沢,鹿児島,名古屋が約5万であったから,三都の大きさがわかる。江戸時代の三都がきわだった大都市となったことは,幕藩制という政治的・経済的構造の特徴と関連があることはいうまでもない。三都が幕藩制の政治的・経済的構造の中枢として位置づけられていたのに対し,長崎は海外貿易の窓口,また城下町は領国という地域の中心でしかなかったという性格の違いがあった。すなわち鎖国によって海外市場との結びつきが長崎以外には認められなくなったこと,石高制による米納年貢制の展開によって大量の年貢米の換金化が必要となったこと,また政治的には参勤交代などによって三都への政治的・経済的比重が増し,城下町などより一段と規模の大きい都市がつくり出されていったのである。京都は,前代からの政治的・経済的中心であった伝統の上に立って,公家や大名たちの金融や武具・奢侈品購入の場として存続していた。江戸は1590年(天正18)に徳川氏の居城地となってから急速に都市化をとげ,幕府直属の家臣や全国の大名たちの屋敷を中心に形成された都市である。そして大坂は全国経済の中心地として,全国の大名が年貢米や領内の特産品を販売し,江戸屋敷の費用にあてるため大坂に蔵屋敷をおいた。
三都は幕藩制の政治的・経済的中枢として位置づけられていたが,住民の生業については,《守貞漫稿》に〈京都の盛んなるもの西陣織殿……大坂の盛んなるもの豪富,子銭屋,巨賈元商……江戸の盛んなるものすべての小売店,食店,武家調用の商人および雇夫の長,酒問屋〉と記されているような,それぞれの特徴があった。京都は織屋を含めて高級奢侈品を生産する職人層が目だつし,江戸は小売,日雇稼が多く,大坂は稼ぎ人という職人,小商人や運送関係の従事者が多い,という住民の職業構成上の特徴がみられたことは確かである。京都は慶長~寛文期(1596-1673)ころを中心に繁栄し,大坂は寛文~化政期(1661-1830)という長い年代にわたって全国経済を牛耳り,江戸は化政・天保期(1804-44)を中心に新しい変化の動きを現出する,といった推移をみせていった。この変化はそれぞれの都市の人口規模のピークを示しており,また京都を中心とした寛永文化,大坂を舞台にした元禄文化,江戸に展開した化政文化という,それぞれの都市の繁栄した時代に,固有の文化を創出していることも注目される。
執筆者:松本 四郎
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近世都市のうち,他と比較して隔絶した人口規模をもつ,江戸・京都・大坂の三つの巨大都市をさす。江戸は幕府所在地として,幕臣・全国大名などの武家屋敷地の集中を基礎としており,京都は朝廷の所在地であるとともに,手工業都市として全国の大名の武具・奢侈品購入の場でもあった。大坂は全国大名の年貢米・特産品の換金市場であった。
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…国府都城【鬼頭 清明】
【中世】
日本の中世都市に関する古典的研究は,西欧の古典的中世都市論の影響の下に,古代都市を統治機能中心にみるのと対の形で,経済すなわち商業手工業中心に自治の達成を規準としながら論じられてきた。したがって中世前期は古代の残影という視角で三都(京都,奈良,鎌倉)の変貌,形成をとらえ,商業・手工業の発達する中世後期に及んで地方を含めて多様な中世都市が一律に自治的要素をもって本格的に成立するとみる傾向が強かった。さらに三都や城下町,門前町,寺内町,港町等々の多様な地方都市の質的差異や,構造的連関まで論じられることは少なかった。…
…化政文化に濃厚な都市的な性格が指摘されるゆえんである。ところがまた〈江戸っ子〉の意識形成は一面では,それまで文化的な価値の基準となってきた上方への対抗心という性格をもっており,それは18世紀後半からこの時期にさかんに著された三都(京,大坂,江戸)比較論のなかでひときわ精彩を放つのが,江戸文人による上方,なかんずく京都批判であったことからもうかがえる。
[文化の大衆性]
ついで化政文化の大きな特色は,そのいちじるしい大衆性に求められるであろう。…
※「三都」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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