浄水(読み)ジョウスイ

デジタル大辞泉 「浄水」の意味・読み・例文・類語

じょう‐すい〔ジヤウ‐〕【浄水】

清らかな水。けがれのない水。
神社で手を洗い清める水。
濾過ろかしたり消毒したりした清浄な水。
[類語]ウオーター生水蒸留水水道水上水井戸水地下水雨水うすい雨水あまみず天水降水冷や水冷水氷水温水呼び水誘い水

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精選版 日本国語大辞典 「浄水」の意味・読み・例文・類語

じょう‐すい ジャウ‥【浄水】

〘名〙
① 清浄な水。清い水。清水。まみず
霊異記(810‐824)下「女衆参り集ひて、浄水を以て経の御墨に加ふ」 〔梁簡文帝‐大法頌〕
② 手などを洗いきよめる水。手洗い水。
※二人むく助(1891)〈尾崎紅葉〉二「浄水(ジャウスヰ)にて三度耳を洗はせ」
③ (━する) 薬品濾過装置(ろかそうち)などによって水を清浄にすること。また、その水。
作戦要務令(1939)一「若し生水を用ふるを要するときは浄水・消毒等を行ふを要す」

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改訂新版 世界大百科事典 「浄水」の意味・わかりやすい解説

浄水 (じょうすい)

清らかな水,飲んで安全な水を古くから浄水と呼んだ。現代ではさらに,原水(原料となる河川水や地下水)に必要な水処理操作を加えて清浄な水に加工する過程をも浄水water purificationという。水道用語としても〈水を浄化する〉と〈浄化された水〉の二つの意味に用いられている。なお,工業用水にあっては,飲用に適する水を作る場合とは限らずに,用途(冷却用,洗浄用など)に適した水質になるまでの処理をするという意味から用水処理という語のほうが広く用いられている。
工業用水

上水道は安心して飲める水をパイプで配るシステムであり,蛇口から出る時点で保たれるべき水質は,飲料水水質基準として定められている。したがって,この目標水質に近い良質の原水が得られるほど簡単な浄水処理で足りる。逆に上流域に都市や工場や農地を多数かかえる大河川の下流部から取水せざるをえない場合には,給水の安全を保つために高度で複雑な浄水処理を余儀なくされる。そこで,どのような浄水処理を必要とするかは,どのような原水を得られるか,もしくは水源流域の水質管理をどこまで徹底しうるかにかかっている。浄水処理の手段は,(1)懸濁物に対する凝集,固液分離,(2)溶存成分に対する凝析,酸化,生物化学的変成,吸着,イオン交換,(3)細菌やウイルスに対する凝集ろ過,殺菌,(4)酸アルカリの中和などであり,これらを目的に応じて組み合わせて用いる。

地下水の水質は一般に良好である。日本の水道の全供給水量のうち約30%は地下水を水源としているが,その70%はとくに除去対象物を含まないため塩素殺菌のみで給水している。水道として飲料水を配る場合,病原微生物からの安全を保つため日本では塩素殺菌を義務づけているからで,この場合は殺菌処理のみが唯一の浄水操作である。一方,地下水でも地層によっては,黄褐色に着色していたり鉄やマンガンを含む水しか得られない場合があり,その除去を必要とする。着色は安定有機物の色コロイドによるもので,凝集剤によりコロイド荷電を中和し凝集生成物に吸合したうえでろ過操作によって除去する。鉄イオン(Ⅱ価)は空気酸化により不溶性の鉄(Ⅲ価)として凝集(接触)ろ過で除去するか,鉄細菌に酸化吸合させてからろ別する。有機コロイド鉄として存在する場合は凝集剤による凝集操作を必要とする。マンガンイオンはマンガン酸化物触媒の存在下で塩素や過マンガン酸カリウムなどの酸化剤を用いて酸化不溶化して除去する。ほかに硬度が高すぎる場合には,消石灰やイオン交換樹脂を用いて軟化処理を施す。

河川の上・中流部や湖沼からは比較的清澄なしかも人為汚染の少ない水を比較的多量に取水することができる。その浄水処理は,降雨時などに水を濁らす粘土コロイドや水中に生育する藻類プランクトンと天然由来の若干の汚染物の除去が対象となり,緩速ろ過方式と急速ろ過方式のどちらかの浄水方法が広く用いられている。両方式とも水中に懸濁する数μm~数十μm程度の微細な浮遊物の除去を主目的としている。

 緩速ろ過方式は,取水した原水を沈殿池に導き粗懸濁物を沈殿させた後に,細かい砂を70~90cmの厚さに敷きつめたろ過池に導き,ろ過面積1m2当り1日5m3程度の緩やかな通水速度でろ過したうえで塩素殺菌して給水する方式である。ろ過池では懸濁物の物理的なろ別がなされるほかに,表層に繁殖する微生物群によるアンモニア,鉄,マンガン,有機成分や臭気成分の酸化,吸着,分解,水中細菌の捕食,ならびに砂層内部の細菌群による窒素成分の安定化などが達成される。原水汚染の程度が軽微であれば,懸濁物のみならず溶存汚染物に対しても十分な浄化がなされ良質のろ過水が得られる。しかし高濁度原水に対応できないことや広大なろ過池面積が必要なため,水源流域の森林や渓流がよく保護されている小河川から取水し,用地を比較的えやすい小都市でしか用いられていない。

 急速ろ過方式は水中の粘土コロイドや色コロイドを,正荷電をもつ凝集剤の添加によって凝集させたうえで,凝集生成物を沈殿,ろ過によって分離する浄水方法である。凝集操作によって沈降分離は小面積で効果的に行われ,さらにろ過池での通水速度をろ過面積1m2当り1日120~200m3にも高められることもあって,浄水場の所要面積は緩速ろ過方式の場合に比して数十分の1で足りる。急速ろ過方式は懸濁物質の除去にきわめて効果的な方法であるので,降雨後に濁りの続く河川から取水する水道ではほとんどこの方式が採用されており,1980年現在で日本の水道給水量の70%はこの方式によって浄水された水である。凝集剤としてはおもにアルミニウム塩が,また一部で鉄塩や高分子物質が使用されている。急速ろ過方式でもある程度の溶存汚染物は酸化剤の併用や,アルミニウム水酸化物への吸合,凝析などにより,凝集,沈殿,ろ過の過程で浄化される。しかし上流域からの排水の影響を強く受けていたり,上流に潜在汚染源がある場合や水の異臭味が問題になる場合には,オゾンによる酸化や活性炭による吸着の過程をつけ加えて,飲料水としての安全をより確かにする努力が払われている。また汚染河川水の処理に当たっては,浄水過程で加える水処理薬品による溶存塩類の増加や塩素化反応による有毒物の生成を極力抑えることに注意が払われている。伝染病細菌に対する最終的安全は塩素殺菌によって確保される。

飲用として生理的に安全な水もしくは飲んでうまい水は,岩石などから溶け出た鉱物質をほどよく含んでいる水であり,通常の上水道はそのような水を給水している。しかし原水の汚染が進み,浄水中に溶存塩類量が過度に増すと,上水道使用先でも給湯,製薬,製氷,病院での血液透析などで障害となることがある。また工場の工程用水としては,高圧ボイラー用水や半導体集積回路洗浄用水のように,スケール生成や絶縁劣化のもととなる溶存イオンを極端にきらい,超純水を必要とする用途がある。そこではその用途に限定した水量に対し,超細密ろ過,多段減圧蒸留,イオン交換,逆浸透などの工程を繰り返して,必要とする水質レベルの純水を製造して使用している。このように用途目的に応じて数々の浄水方法が開発されている。なお,海水から真水を取り出す操作は海水淡水化,脱塩処理,造水などと呼ばれているが,水中の溶存無機物質と水を分離する操作であり,蒸留,イオン透析,逆浸透などの方法が用いられている。
飲料水 →海水淡水化
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