海岸沿いの陸地に卓越する気候。大洋上にある島にみられる温和な海洋性気候と似ているが、これと大陸性気候との間の漸移的な特徴を有する。大陸性気候に比べると、気温の日較差や年較差が小さく、暖まりにくく冷めにくい海水の熱容量の影響で、最高・最低温度が内陸より遅れて現れる。低緯度地方では一年中、海陸風が発達しやすいが、中・高緯度地方は主として暖候季に海風と陸風の日交替が顕著である。この海風や夏の季節風のように、海から陸への風が卓越する時期あるいは地域ほど海岸気候が明確となる。海からの風が寒流海上を吹走する場合(たとえば東北地方に吹く「やませ」など)は、海霧が濃く発達して内陸に侵入し、低温と日照不足で農業上冷害をもたらしたり、潮風で塩害を被ることがある。
[福岡義隆]
海に面した陸地縁辺部にみられる特殊な気候で,海洋性気候と大陸性気候の中間的性格を有するが,やや前者に近い特性をもっている。気温の年変化・日変化が小さく,寒暑の厳しさが弱いのが特徴である。中緯度地方では霜・氷などの現象の出現が抑えられ,温暖で,細じんが少なく,紫外線が強いことなどのために保養地などに適している。海陸風が発達することも特色で,低緯度地方では年中,中緯度地方では暖候季を中心に昼間は海風が,夜間は陸風が吹く。この海風と陸風が交替するころに一時風がやみ,いわゆる〈なぎ〉の現象が生じ,むし暑く感ずる。海岸気候では潮風の影響や海霧の侵入する地域,台風の襲来をしばしば受ける地域などもある。海岸気候の発達状態は卓越風と背後の地形条件で著しく異なる。海から陸に向かう風が卓越する地域ではよく発達するが,山地が海岸に迫っているところではあまり発達はよくない。
執筆者:山下 脩二
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