消費性向(読み)ショウヒセイコウ(その他表記)propensity to consume

デジタル大辞泉 「消費性向」の意味・読み・例文・類語

しょうひ‐せいこう〔セウヒセイカウ〕【消費性向】

所得に対する消費割合平均消費性向限界消費性向とに分けられる。→貯蓄性向

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精選版 日本国語大辞典 「消費性向」の意味・読み・例文・類語

しょうひ‐せいこうセウヒセイカウ【消費性向】

  1. 〘 名詞 〙 所得に対する消費の変化の割合を示すもの。ケインズの用語。所得の大小、また階層などに応じて一般に異なる値をとり、消費に対する心理的傾向を表わす。限界消費性向と平均消費性向の二つの概念がある。〔流通革命(1962)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「消費性向」の意味・わかりやすい解説

消費性向 (しょうひせいこう)
propensity to consume

ある一定期間に得た所得のうち,何割を消費にふりむけるかを示した消費行動の特性をいう。所得のうちどれだけを消費にふりむけるかは,個々人,もしくは個々の家計の嗜好条件や心理的条件などが影響して決まるはずである。消費性向では,通常所得と消費の平均的比率(=消費/所得)で定義する平均消費性向と,所得・消費のある期間内の増分の比率(=消費の増分/所得の増分)で定義する限界消費性向とは必ずしも等しくならず,それを区別して用いる場合が多い。

 ケインズは,国民所得水準の決定を論ずるに際して,一国マクロ・レベルの消費(実質)が,所得(実質)の線形関数で近似的に表現できるとした。それをC=αY+βと表す。ただしCは実質消費水準,Yは実質所得水準,α,βはパラメーターとする。このとき,限界消費性向αは,通常0<α<1.0の間の値をとる一定値で定義されるのに対して,平均消費性向はとなり,所得水準が上昇するにつれて,低下していくことになる。所得のうち消費にふりむけた残余は,貯蓄だから,定義的に1.0-平均消費性向=平均貯蓄性向となる。なおケインズの国民所得の決定理論においては,限界貯蓄性向投資乗数乗数理論)として,が重要な役割を果たしている。
消費関数
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「消費性向」の意味・わかりやすい解説

消費性向
しょうひせいこう
propensity to consume

消費の所得に対する割合をいう。個人は所得から種々の欲望を満たすために消費を行い、消費に支出されなかった所得が貯蓄される。消費性向は平均消費性向と限界消費性向とに分けて考えられる。いま、消費をC、所得をYと表せば、C/Yが平均消費性向であり、消費と所得のある期間の増加分をそれぞれΔCΔYと表せば、ΔC/ΔYが限界消費性向である。一般には限界消費性向は逓減(ていげん)すると考えられている。その理由は、所得が増加するにしたがって個人の欲望の満足される度合いは高まり、所得の増加に比較して消費支出の増加はしだいに小さくなってくると考えられるからである。したがって限界消費性向の逓減につれて平均消費性向も低下する。消費性向の大きさは各国の制度的要因、人々の生活慣習に依存しており、短期的には安定していると考えられる。

 所得は消費に支出され、残余が貯蓄となるので、消費性向と貯蓄性向との間には、
  消費性向=1-貯蓄性向
という関係が恒等的に成立する。

[鈴木博夫]

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百科事典マイペディア 「消費性向」の意味・わかりやすい解説

消費性向【しょうひせいこう】

一国の全体としての消費は所得に依存すると想定する場合,所得ないし可処分所得のうち消費支出される割合をいう。ある期間における所得ないし可処分所得と消費の増分比率を限界消費性向という。民間投資は直接に所得をふやし,ふえた所得は限界消費性向によって支出されるから,民間投資はその何倍かの所得を生む。→乗数理論
→関連項目家計貯蓄性向

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「消費性向」の意味・わかりやすい解説

消費性向
しょうひせいこう
propensity to consume

所得のうちどれだけを消費にあてるかを示す割合。全所得のうち消費にあてられる割合を平均消費性向,所得の増加分のうちの消費の増加分にあてられる割合を限界消費性向と呼ぶ。消費者の行動を表わすもので,これに影響を与えるものとして物価水準,賃金単位の変化,所得分布の変化,利子率の変化,社会の慣習,制度,心理的要因などがあげられる。一般に所得の増加に伴い消費性向は逓減する傾向にあり,所得階層が高くなると低下する。ケインズ経済学において乗数理論の中核をなす概念である。

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