日本大百科全書(ニッポニカ) 「消費者余剰」の意味・わかりやすい解説
消費者余剰
しょうひしゃよじょう
consumer's surplus
ある商品1単位について、消費者が最大限支払ってもよいと思う価格(需要価格)から、実際に支払う価格(市場価格)を差し引いた残りの金額をいう。たとえば、リンゴを店で買うと1個150円であるとする。消費者が最初の1個目のリンゴに対して最大限200円を支払ってもよいと思ったとすると、消費者の初めの1個目のリンゴの限界評価額は200円であり、実際支払うべき価格は150円であるから、最初の1個目のリンゴのもたらす消費者余剰は50円となる。通常は2個目のリンゴは最初の1個目のリンゴより小さな満足しか消費者にもたらさないであろう。したがって次の2個目のリンゴの限界評価額がたとえば180円であるとすると、2個目のリンゴの消費者余剰は30円となる。消費者は何個までリンゴを購入するだろうか。需要価格が店でのリンゴの価格より下回るならば( では4個目のリンゴのとき)、消費者はそのリンゴは購入しないであろう。つまり需要価格がリンゴの市場価格を下回らない限り、いいかえると消費者余剰がちょうどゼロとなる最後の個数までリンゴを購入するであろう。 では3個目のリンゴの需要価格はちょうど市場価格150円に等しいから、消費者は結局、リンゴを3個購入することになる。このときの消費者余剰の総額は、50円+30円+0円=80円となる。リンゴの各単位に対する限界評価額、あるいは需要価格を示す曲線が、いわゆるリンゴの需要曲線である。
このような消費者余剰の概念は、生産者余剰とともに、A・マーシャルやJ・R・ヒックスによって唱えられ、経済厚生の程度を測定するための重要な概念となったが、経済体系全体を考慮した場合には、これらの測定は一般に著しく困難になるという問題点をもっている。
[内島敏之]
『J・R・ヒックス著、早坂忠・村上泰亮訳『需要理論』(1958・岩波書店)』▽『A・マーシャル著、馬場啓之助訳『経済学原理』全4巻(1965~67・東洋経済新報社)』