湯波、湯婆とも書く。大豆製品の一つ。語源は、豆乳(とうにゅう)の表面に浮かぶ皮「浮皮(うわ)」から、また豆腐の上物(うわもの)、豆腐の姥(うば)の略語などの説がある。豆乳を煮つめ、表面にできる被膜状のものをすくい取ったものが生(なま)湯葉、乾燥したものが干し湯葉である。通常、湯葉というと干し湯葉を意味することが多い。鎌倉時代に中国から伝わり、江戸時代には巻き湯葉、絞り湯葉、茶巾(ちゃきん)湯葉、糸巻き湯葉などの加工湯葉がつくられている。京都と日光が名産地。生湯葉には、大きく畳んだ引き上げ湯葉、巻き湯葉、ぎんなん・百合根(ゆりね)などの具を生湯葉で巻き込み油で揚げた牡丹(ぼたん)湯葉(東寺(とうじ)湯葉ともいう)などがある。干し湯葉には、引き上げ湯葉を干した板(いた)湯葉(平(ひら)湯葉ともいう)、小形に畳んだ畳み湯葉、結び湯葉、巻いて干した巻き湯葉(太巻き、細巻きなど)などがある。干し湯葉では黄色く着色したものもある。また、切れ端を袋詰めにしたり、生湯葉で形の悪いものや鍋(なべ)底の濃厚な部分からつくったものを甘湯葉として総菜用に売る店もある。
[河野友美・山口米子]
湯葉は豆乳を濃縮した形であるため、タンパク質が豊富である。干し湯葉で53%、生湯葉でも22%含まれ、精進料理のタンパク質の給源である。脂肪、カルシウム、鉄、カリウム、ビタミンB1も多く含まれる。生湯葉はそのままわさびじょうゆで食べたり、から揚げ、煮物、吸い物に用いる。干し湯葉は水が行き渡る程度にぬるま湯でもどし、煮物、吸い物、ばらずし(五目ずし)などに用いる。生湯葉は冷蔵庫に入れ、数日間で使用すること。干し湯葉は保存性はよいが、長く置いたり、保存温度が高いと脂肪が酸化し、風味が低下する。中国の湯葉は豆腐皮(ドウフウピイ)、油皮(イウピイ)とよばれ、多種類の形がある。
[河野友美・山口米子]
ダイズを原料とする加工食品。豆乳を加熱して得られるもので,中国では豆腐皮(トウフーピー),腐皮(フーピー)という。鎌倉期に禅僧が製法を伝えたものらしく,室町初期の《遊学往来》などに〈豆腐上物(とうふのうわもの)〉として現れ,やがて〈とうふのうば(豆腐姥)〉,略して〈うば〉と呼ばれるようになった。〈ゆば〉は〈姥〉のなまりで,表面にしわがよっているための称だ,と山東京伝はいう。豆乳を平らな浅いなべに入れ,にがりなどの凝固剤を加えずにそのまま煮ると,タンパク質が薄い膜になって表面に張る。この膜を細い棒ですくい取り,洗濯物を干すようにして水けを切る。こうしてさらに6~7回採取するが,しだいに表面のしわが粗くなり,質も低下する。なべから引き上げて水けを切ったものを生湯葉,引上げ湯葉といい,乾燥させたものを干し湯葉という。干し湯葉は平らなものを平湯葉,巻いたものを巻き湯葉といい,ほかにいろいろの細工を施すものもある。生湯葉はそのままわさび醬油で食したり,煮物やわん種にするが,煮すぎないようにする。干し湯葉は煮物,わん種のほか,油で揚げて酒のさかなにしてもよい。タンパク質,脂質,カルシウム,鉄,各種ビタミンを多く含む食品で,昔から精進料理でとくに多用され,西の京都,東の日光が産地として知られてきた。
執筆者:菅原 竜幸+鈴木 晋一
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