湯葉(読み)ユバ

デジタル大辞泉 「湯葉」の意味・読み・例文・類語

ゆば【湯葉】[書名]

芝木好子中編小説。昭和35年(1960)「群像」誌に発表。同年、第12回女流文学者賞受賞。自身の母方祖母モデルに、湯葉作りの家業を守りつつ懸命に生きる女性の半生を描く。以後「隅田川」「丸の内八号館」と続く自伝的3部作の第1作目。

ゆ‐ば【湯葉/湯波/油皮】

豆乳を煮たときに上面にできる薄黄色皮膜をすくい取ったもの。なま湯葉と干し湯葉があり、吸い物煮物などに用いる。うば。
[補説]書名別項。→湯葉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「湯葉」の意味・読み・例文・類語

ゆ‐ば【湯葉】

  1. 〘 名詞 〙 豆乳を煮たて、その上面にできる薄皮をすくいとったもの。生ゆばと乾燥させたものとがある。椀種や煮物に用いる。うば。
    1. [初出の実例]「山家の御馳走は何処も豆腐湯波(ユバ)干鮭(からさけ)計りなるが」(出典:風流仏(1889)〈幸田露伴〉三)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「湯葉」の意味・わかりやすい解説

湯葉
ゆば

湯波、湯婆とも書く。大豆製品の一つ。語源は、豆乳(とうにゅう)の表面に浮かぶ皮「浮皮(うわ)」から、また豆腐の上物(うわもの)、豆腐の姥(うば)の略語などの説がある。豆乳を煮つめ、表面にできる被膜状のものをすくい取ったものが生(なま)湯葉、乾燥したものが干し湯葉である。通常、湯葉というと干し湯葉を意味することが多い。鎌倉時代に中国から伝わり、江戸時代には巻き湯葉、絞り湯葉、茶巾(ちゃきん)湯葉、糸巻き湯葉などの加工湯葉がつくられている。京都と日光が名産地。生湯葉には、大きく畳んだ引き上げ湯葉、巻き湯葉、ぎんなん・百合根(ゆりね)などの具を生湯葉で巻き込み油で揚げた牡丹(ぼたん)湯葉(東寺(とうじ)湯葉ともいう)などがある。干し湯葉には、引き上げ湯葉を干した板(いた)湯葉(平(ひら)湯葉ともいう)、小形に畳んだ畳み湯葉、結び湯葉、巻いて干した巻き湯葉(太巻き、細巻きなど)などがある。干し湯葉では黄色く着色したものもある。また、切れ端を袋詰めにしたり、生湯葉で形の悪いものや鍋(なべ)底の濃厚な部分からつくったものを甘湯葉として総菜用に売る店もある。

河野友美・山口米子]

栄養・調理

湯葉は豆乳を濃縮した形であるため、タンパク質が豊富である。干し湯葉で53%、生湯葉でも22%含まれ、精進料理のタンパク質の給源である。脂肪カルシウム、鉄、カリウム、ビタミンB1も多く含まれる。生湯葉はそのままわさびじょうゆで食べたり、から揚げ、煮物、吸い物に用いる。干し湯葉は水が行き渡る程度にぬるま湯でもどし、煮物、吸い物、ばらずし(五目ずし)などに用いる。生湯葉は冷蔵庫に入れ、数日間で使用すること。干し湯葉は保存性はよいが、長く置いたり、保存温度が高いと脂肪が酸化し、風味が低下する。中国の湯葉は豆腐皮(ドウフウピイ)、油皮(イウピイ)とよばれ、多種類の形がある。

[河野友美・山口米子]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「湯葉」の意味・わかりやすい解説

湯葉 (ゆば)

ダイズを原料とする加工食品。豆乳を加熱して得られるもので,中国では豆腐皮(トウフーピー),腐皮(フーピー)という。鎌倉期に禅僧が製法を伝えたものらしく,室町初期の《遊学往来》などに〈豆腐上物(とうふのうわもの)〉として現れ,やがて〈とうふのうば(豆腐姥)〉,略して〈うば〉と呼ばれるようになった。〈ゆば〉は〈姥〉のなまりで,表面にしわがよっているための称だ,と山東京伝はいう。豆乳を平らな浅いなべに入れ,にがりなどの凝固剤を加えずにそのまま煮ると,タンパク質が薄い膜になって表面に張る。この膜を細い棒ですくい取り,洗濯物を干すようにして水けを切る。こうしてさらに6~7回採取するが,しだいに表面のしわが粗くなり,質も低下する。なべから引き上げて水けを切ったものを生湯葉,引上げ湯葉といい,乾燥させたものを干し湯葉という。干し湯葉は平らなものを平湯葉,巻いたものを巻き湯葉といい,ほかにいろいろの細工を施すものもある。生湯葉はそのままわさび醬油で食したり,煮物やわん種にするが,煮すぎないようにする。干し湯葉は煮物,わん種のほか,油で揚げて酒のさかなにしてもよい。タンパク質,脂質,カルシウム,鉄,各種ビタミンを多く含む食品で,昔から精進料理でとくに多用され,西の京都,東の日光が産地として知られてきた。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「湯葉」の意味・わかりやすい解説

湯葉
ゆば

大豆の伝統的な加工食品。大豆からつくった豆乳を静かに加熱するとき,表面にできる皮膜をいう。蛋白質,脂肪が多い。普通は乾燥して保存され,淡黄色の光沢をもち,水戻しするとすぐ軟らかくなる。淡白,上品なもので,日本料理に広く用いられる。作り方は,濃厚な豆乳を平鍋で静かに加熱し,全面に広がる皮膜を竹ひごですくい上げ,そのまま釜の上につるし乾燥させる。軟らかいうちに切り結んだり,銀なん,百合根,きくらげなどを包んで保存することもある。京都,日光が産地。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「湯葉」の意味・わかりやすい解説

湯葉【ゆば】

ダイズ加工品の一種。豆乳を静かに加熱し,表面に黄色い皮膜ができるのを竹ぐしですくいあげたのが生湯葉,乾燥したのが干し湯葉。京都,日光が主産地。タンパク質と脂肪に富む。汁の実,鍋(なべ)物の実,精進料理などに用いる。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

栄養・生化学辞典 「湯葉」の解説

湯葉

 豆乳を加熱して表面に浮いてくる膜を集めて作る食品.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android