改訂新版 世界大百科事典 「溶解パルプ」の意味・わかりやすい解説
溶解パルプ (ようかいパルプ)
dissolving pulp
化学パルプのなかで,とくに精製度が高くセルロース含有量が90%以上のパルプ。パルプの利用は,紙や不織布のように繊維形態を保持したままの場合(製紙パルプ)と,薬品と反応させてセルロース誘導体を作るかあるいは溶解,再生して再生セルロースにする場合(溶解パルプ)がある。かつて溶解パルプはビスコースレーヨン,スフ(ステープルファイバー)を製造するために用いられたのでレーヨンパルプrayon pulpともいった。今日日本では亜硫酸法で広葉樹または針葉樹から溶解パルプを作っている。セルロースの純度を上げるため,木材の蒸解条件やパルプの漂白条件がきつく,100kgの木材からパルプは40kg以下しか得られない。17.5%の苛性ソーダ溶液で溶解パルプを抽出した残りをα-セルロースといい,95%以上の高α-セルロースは酢酸セルロースの製造に使用される。α-セルロースが90%程度の普通の溶解パルプは,ビスコースレーヨン,およびスフ,セロハンの製造に用いる。そのほか,セルロース誘導体のカルボキシメチルセルロース,メチルセルロース,ニトロセルロースなどの製造原料となる。木材の半分以上が蒸解排液中に溶出するので,その中の多糖類を利用して微生物処理により飼料用酵母,エチルアルコール,薬品原料を作っている。またメタン発酵でメタンガスを作る工場もある。中和して沈殿で得られるリグノスルホン酸は分散剤などに利用される。
執筆者:臼田 誠人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報