改訂新版 世界大百科事典 「濁水渓」の意味・わかりやすい解説
濁水渓 (だくすいけい)
Zhuó shuǐ xī
台湾本島中部の川。中央山脈の西に源を発し台湾海峡に注ぐ。台湾で最大の川で,流長186km,流域面積3114km2。水系は阿里山脈によって東西に分かれ,東部は南北に長い支流をもち,小さな河谷平野を開く。高山族の居住地で有名な霧社もその上流部にある。阿里山中に小支流をさかのぼると,台湾最大の湖であり,また風光明媚の地として知られる日月潭(じつげつたん)がある。阿里山脈の峡谷をぬけると南北に分流してゆるやかな扇状地を形成し,本流の北は彰化県,南は雲林県の主要部分を構成する。この扇状地性の平野は,台南平野の北半を占め,清代に対岸の福建,浙江よりの移民開拓がすすめられた地域で,現在も台湾の最も肥沃な農業地域である。また網目状に分流する水路を利用して市鎮が発達し,人口密度も高く,彰化県は台湾で最も人口密度の高い県である。分流の南端,北港鎮にある朝天宮は清代に建てられ,最も大規模な廟観であり,民間信仰の中心となっている。
執筆者:秋山 元秀
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報