(読み)こがす

精選版 日本国語大辞典 「焦」の意味・読み・例文・類語

こが・す【焦】

〘他サ五(四)〙
① 火や日で焼いて黒くする。こげた状態にする。
※薫集類抄(1165頃か)下「こがさぬものから、よくこがね色にあぶれ」
※俳諧・幻住菴記(1690頃)「奥羽象潟(きさがた)の暑き日に面をこがし」
② 匂いをつけるために薫物(たきもの)の煙でくすぶらせる。
※源氏(1001‐14頃)夕顔「白き扇のいたうこがしたるを」
③ 心を苦しめ悩ます。苦悶させる。焦慮する。
※後撰(951‐953頃)恋二・六四四「涙にも思ひの消ゆるものならばいとかく胸はこがさざらまし〈紀貫之〉」
小学読本(1874)〈榊原那珂稲垣〉四「君の所在を知らず日夜思を焦したり」

じれった・い【焦】

〘形口〙 じれった・し 〘形ク〙 思いどおりにならないのでいらいらする気持である。また、事がうまくゆかないであせるような気持である。はがゆい。もどかしい。じれじれしい。じれたい。
※雑俳・柳多留‐初(1765)「じれったく師走を遊ぶ針とがめ」
滑稽本東海道中膝栗毛(1802‐09)五「おいらもさっきにから、じれったくてならなんだ」
じれった‐が・る
〘自ラ五(四)〙
じれった‐げ
〘形動〙
じれった‐さ
〘名〙

あせ・る【焦】

〘自ラ五(四)〙
① 気がいらだってあばれる。手足をばたばたさせて騒ぐ。
梁塵秘抄(1179頃)二「娑婆にゆゆしく憎きもの、法師のあせる上馬に乗りて」
② 思い通りに事が運ばないので、急いでしようとして落ち着かなくなる。気がいらだつ。気をもむ。じりじりする。
※天理本狂言・塗師(室町末‐近世初)「其時、女房うしろより、いろいろ、てまねきして、身をあせり、男をよぶ」
③ 俗に、あわてる。
※にんげん動物園(1981)〈中島梓〉九三「甘栗を買おうとして反射的に『あまつ…』と云いかけてあせることがある」

こげ【焦】

〘名〙 (動詞「こげる(焦)」の連用形名詞化)
① 物が焼けてこげること。また、そのもの。
※玉塵抄(1563)四二「焦石に大海の水をそそけどもこげはやまぬぞ」
② 陶器類で表面の釉(うわぐすり)が黒く焼けたり、焼けただれて熔岩状になったりした部分をいう。抹茶茶碗水指(みずさし)花入れなどの、鑑賞上の見所とする。
③ 「こげめし(焦飯)」の略。〔日葡辞書(1603‐04)〕

こがし【焦】

〘名〙 (動詞「こがす(焦)」の連用形の名詞化)
① こがすこと。また、こがしたもの。
※俳諧・犬筑波集(1532頃)雑「あはづの原の茶こそにがけれ かねひらやこかしをのみてかへるらん」

じら・す【焦】

〘他サ五(四)〙 相手の望むことを故意にさまたげて、相手の気持をいらいらさせる。いらだたす。
洒落本・契情買虎之巻(1778)五「『壱貫の所だが壱分やる』『こりゃアなんでござりやす。夜かごでござりやす。じらしなさりやすな』」
浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一「さればといって手を引けば、また意(こころ)あり気な色目遣ひ、トかうじらされて文三は些(ち)とウロが来たが」

こがれ【焦】

〘名〙 (動詞「こがれる(焦)」の連用形の名詞化)
① こがれること。恋い慕うこと。
※類従本伊勢集(11C後)「身の憂きを知ればはしたになりぬべし思へば胸の焦のみする」
② 「こがれいい(焦飯)」の略。〔日葡辞書(1603‐04)〕

じ・れる【焦】

〘自ラ下一〙 思いどおりにならないでいらいらする。もどかしくていらだつ。
※浄瑠璃・神霊矢口渡(1770)一「尊氏追討の勅定ごかしじれさせて討ち死さすか」
※人情本・春色梅美婦禰(1841‐42頃)初「なにをお前はじれるのだへ」

じれ【焦】

〘名〙 (動詞「じれる(焦)」の連用形の名詞化) じれること。じれったく思うこと。もどかしく思うこと。また、その気持。いらだち。
※洒落本・廓通遊子(1798)発端「ぐっとさきにぢれを付けておいて知らねへふりさ」

こ・げる【焦】

〘自ガ下一〙 こ・ぐ 〘自ガ下二〙 焼けて黒くなる。火や日にやけて色が変化する。
※太平記(14C後)一二「猛火忽ちに消えて妻戸は半ば焦(コゲ)たる許り也」

あせり【焦】

〘名〙 (動詞「あせる(焦)」の連用形の名詞化) あせること。気がいらだつこと。
※故旧忘れ得べき(1935‐36)〈高見順〉八「酔ひの為しっかり握ってゐることの出来ないあせりで」

いら・る【焦】

〘自ラ下二〙 (思うようにいかないことや不快なことで)心がいらいらする。気をもむ。じれる。
※宇津保(970‐999頃)菊の宴「いみじく惑ひいられ給ふめるを」

こが・る【焦】

〘自ラ下二〙 ⇒こがれる(焦)

こ・ぐ【焦】

〘自ガ下二〙 ⇒こげる(焦)

じれった・し【焦】

〘形ク〙 ⇒じれったい(焦)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「焦」の意味・読み・例文・類語

しょう【焦】[漢字項目]

常用漢字] [音]ショウ(セウ)(呉)(漢) [訓]こげる こがす こがれる あせる
こげる。こがす。「焦点焦土焦熱焦眉しょうび
いらだつ。あせる。「焦心焦躁しょうそう焦慮

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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