出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
飛驒山脈中部,長野県大町市と安曇野(あづみの)市との境界に位置する山。標高2763m。飛驒山脈の前山をなす常念山脈はこの付近からはじまり,大天井(おてんしよう)岳,常念岳,大滝山と南に続く。燕岳の山名は,ツバメが羽根を広げたような山容によるとも,ツバメが多くすむことによるともいう。山頂付近に南北に連なる稜線は標高約2700mの定高性であり,古くは屛風(びようぶ)岳ともよばれた。山体は中生代白亜紀の花コウ岩で構成されており,森林限界を越える稜線部はマサ(真砂)に風化した砂礫地となっている。特に山頂部の造形的な美しさは有名である。大天井岳へ至る稜線には蛙(げえろ)岩や為右衛門吊岩などの奇岩がある。この稜線は表銀座縦走路といわれ,訪れる人も多いが,付近にはクマやカモシカなども多く生息する。山頂付近には設備のよい燕山荘があり,ここから約30分で山頂に立つことができる。東側の谷間には文政年間(1818-30)に開湯した中房(なかぶさ)温泉があり,登山基地となっている。山頂へは中房温泉から合戦尾根経由のコースで約4時間半であり,初心者にも向いた登山路である。
執筆者:伊藤 真人
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長野県西部、北アルプスの南東部にある山。標高2763メートル。常念(じょうねん)岳、大天井(だいてんじょう)岳とともに常念山脈を形成し、槍ヶ岳(やりがたけ)などの前山にあたる。山頂一帯は花崗(かこう)岩の裸地で白く輝いている。山容が燕(つばめ)が羽を広げているようだとか、燕が多いことから燕岳の名がついたといわれる。山頂からの展望はすばらしく、「2000尺(約700メートル)以上の山が94見える」といわれ、西方に高瀬渓谷を隔てて三俣蓮華(みつまたれんげ)岳、南西に槍ヶ岳、穂高(ほたか)岳など、北方に白馬(しろうま)岳や後立山(うしろたてやま)連峰、さらに富士山、南アルプス、浅間山、八ヶ岳(やつがたけ)など、本州中央部の高山を一望することができる。山頂から約1キロメートル南に施設の整った山小屋がある。山麓(さんろく)の中房(なかぶさ)温泉から約6時間の行程でこの山小屋に着く。大天井岳を経て槍ヶ岳への表銀座縦走路の起点にあたり、登山入門者向けの北アルプスでは人気のある山の一つである。
[小林寛義]
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