日本大百科全書(ニッポニカ) 「大天井岳」の意味・わかりやすい解説
大天井岳
だいてんじょうだけ
長野県西部、北アルプスの南東部にある山。標高2922メートル。北部の燕岳(つばくろだけ)、南部の常念岳(じょうねんだけ)とともに常念山脈の主峰をなす。松本盆地に臨み、槍ヶ岳(やりがたけ)、穂高(ほたか)連峰の前山にあたる。燕岳から眺める大天井岳は天守閣のような雄大な山容を示す。江戸時代の絵図には神明岳と書かれている。山名は天井のように高いというところから名づけられたとも、明治末期の呼び名御天照(おてんしょう)、御天上からの転訛(てんか)ともいわれる。山体は黒雲母花崗(くろうんもかこう)岩からなり、山頂からの北アルプスの全容や、南アルプス、八ヶ岳(やつがたけ)連峰などの展望はすばらしい。北東麓(ろく)の中房(なかぶさ)温泉を出発して燕岳・燕山荘から稜線(りょうせん)沿いをとる経路が一般的。槍ヶ岳への縦走路にもあたり、常念山脈はアルプスの表銀座ともいわれる。なお、大天井岳から直接槍ヶ岳へ至る喜作新道(きさくしんどう)は、1922年(大正11)に名案内人小林喜作が開いたもので、切り通しの岩盤に喜作のレリーフがある。
[小林寛義]