片歌(読み)カタウタ

デジタル大辞泉 「片歌」の意味・読み・例文・類語

かた‐うた【片歌】

古代歌謡一体。五・七・七の3句19音からなる歌。多く問答に用いられ、2首合わせると旋頭歌せどうかの形になる。雅楽寮で教習した大歌おおうた一つでもある。

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精選版 日本国語大辞典 「片歌」の意味・読み・例文・類語

かた‐うた【片歌】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 古代和歌の一体。五・七・七の三句で一首をなすもの。多くは問答歌として二首そろって完結するもの。雅楽寮の大歌(おおうた)の一つとなっている。
    1. [初出の実例]「愛しけやし吾家(わぎへ)の方よ雲居立ち来も、とうたひたまひき。此は片歌(かたうた)ぞ」(出典古事記(712)中)
  3. 江戸時代建部綾足俳諧発句をそしって呼んだ語。
    1. [初出の実例]「芭蕉は隠遁の人なり、依て其末流其隠遁をこのみ、片歌をもて隠遁のものとす」(出典:俳諧・片歌二夜問答(1763))

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改訂新版 世界大百科事典 「片歌」の意味・わかりやすい解説

片歌 (かたうた)

日本上代歌謡形式の一つ。5・7・7の3句形式をいう。名称の出典は《古事記》景行天皇条・仁徳天皇条。景行天皇条では,〈愛(は)しけやし 吾家(わぎえ)の方(かた)よ 雲居(くもい)起(た)ち来(く)も〉を〈此は片歌なり〉とし,仁徳天皇条では,〈汝(な)が御子や 終(つい)に知らむと 雁(かり)は卵生(こむ)らし〉を〈此は本岐(ほき)歌の片歌なり〉としている。歌謡の形式としては最短のものである。《万葉集》にはすでに見られず,早い時期にすたれてしまったようである。片歌の〈片〉は,対になる片方の意味と一般には理解されている。記紀では問答の一方としてこの形式が用いられ,また片歌が2首合体して5・7・7/5・7・7の旋頭歌(せどうか)形式になったと見られるところからして,《古事記伝》を起点とするこの理解が広く行われている。ただし,唱和する左右両座の片方の意味で,音楽上の呼称であったとする説もある。さらに,片歌2首が合体して旋頭歌ができたのではなく,逆に旋頭歌から独立して片歌ができたとする説もある。
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百科事典マイペディア 「片歌」の意味・わかりやすい解説

片歌【かたうた】

記紀などに見られる上代歌謡の一形式で,5・7・7の3句形式をいう。これを2度繰り返せば旋頭歌(せどうか)になる。歌謡の形式としては最も短く,簡潔で,唱和・問答などの場合に用いられた。
→関連項目記紀歌謡建部綾足和歌

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「片歌」の意味・わかりやすい解説

片歌
かたうた

一般には、和歌の歌体の一つで、音数が五・七・七という三句形式の歌をいう。しかし『古事記』では、一組の歌謡のうち最後の歌謡の歌い方の名称として用いている。たとえば、数首の歌謡の最後のものを、「汝(な)が御子(みこ)や 遂(つひ)に知らむと 雁(かり)は卵産(こむ)らし 此(こ)は本岐歌(ほきうた)の片歌なり」(仁徳(にんとく)天皇条)のように、歌曲名「本岐歌」とともに称している。ただ、歌い方についての具体的なことについては定説がない。

 なお、この三句形式の歌は『古事記』に9首、『日本書紀』に3首みられるほか、平安時代の神楽歌(かぐらうた)にもみいだされ、本来、歌謡の形式であったと考えられる。

[遠藤 宏]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「片歌」の意味・わかりやすい解説

片歌
かたうた

上代歌謡の一形式。5・7・7音を基本とする。もともとは短歌または旋頭歌 (せどうか) の上句もしくは下句だけをうたう場合をさしたと考えられる。『古事記』歌謡に 11首,『日本書紀』歌謡に6首 (うち3首は『古事記』歌謡と重複) あるだけであり,風土記歌謡や『万葉集』などにはみられない。独立して用いられた例はなく,問答の一方もしくは双方に用いられるか,他の形式の歌謡と連続して用いられる場合に限られる。後者の場合,1例を除いては一連の歌謡の最後に用いられており,それが本来の形であったと考えられる。

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世界大百科事典(旧版)内の片歌の言及

【建部綾足】より

…画号は建凌岱,孟喬(うきよう),寒葉斎など。片歌(かたうた)や小説では綾足,綾太理と号した。本名を喜多村金吾久域(ひさむら)といい,弘前藩家老の次男として生まれたが,20歳のとき兄嫁との恋が原因で藩を出奔し,武士身分を捨てた。…

※「片歌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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