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片葉の葦 かたはのあし

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

片葉の葦
かたはのあし

日本古来の伝説の一つ。片方の葉のみ生長したというあしの由来を説くもので,各地に伝わる。この由来譚には共通した筋がみられない。片葉の植物の伝説は,ほかにすすきなどもあり,これらは従来,古代の祭りの慣習から説明されている。各地の神事にヒトツモノと呼ばれ,必ず神前に供えられる1本のあしやすすきが登場する例がみられる。この片葉のカタは諸葉のモロ,すなわち2つということに対して1つを意味し,もとは尸童 (よりまし) が手に取った手草 (たぐさ) のことで,この採集地となっていた場所を神聖視したことから,現在の「片葉の葦」の名勝に転じたという。片方しかないヒトツモノは本来の姿ではない特殊なものであり,日常的な姿とは異なるものを神聖視する日本人の観念を示す例の一つと考えられる。

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世界大百科事典 第2版の解説

かたはのあし【片葉の葦】

葉が片側にのみついているというアシの由来を説く伝説。全国的に分布するが,とくに祭祀に直接関係したと思われる土地に多い。その内容はさまざまで,共通の理由をみつけ出すのは難しい。もともと片葉のアシは祭祀の際に神霊にささげられたり,または尸童(よりまし)が手にする採り物であって,これに神霊が宿ると解釈されている。このように信仰の対象であるアシは神聖視され,採集地も一定しているために伝説化したのであろう。すなわち,片葉という実際上の形状はもちろんであろうが,むしろこれらのアシが祭祀に用いられたものであるという印象から発生した伝説と考えられる。

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大辞林 第三版の解説

かたはのあし【片葉の葦】

茎の片方にしか葉が生えない葦。八幡太郎の立てた片羽の白矢が根を生じたものとか、熊谷直実の馬が葉の片方を食い残したなど、種々の伝説がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

片葉の葦
かたはのあし

地勢や水流など自然環境のいたずらで、片方の葉しか茂らぬ葦。その奇形の由来を説明するため、さまざまの伝説が各地で生まれた。たとえば、弘法(こうぼう)大師などの高僧もしくは源義経(よしつね)、熊谷直実(なおざね)など語物に伝えられる武将が、杖(つえ)または軍扇でなぎ払ったため片葉の葦となった、というたぐいである。英雄の乗った馬がそれを食らったため、とする伝承もときたまみられる。
 岩手県盛岡市の伝説によると、観音様の片方の腕を泥棒が切り落とした。その腕が川を流れ、これに触れた葦はみんな片葉となった。愛知県中島郡酒見神社付近に生えるそれは次のような伝説をもつ。昔、若い僧を恋した姫がいた。しかし、その愛を拒絶されたため、これを悲しみ池に身を投げたところ、片思いの怨(うら)みで、あたりの葦は片葉となった。
 片葉の葦のほかに、片葉のススキ、片葉の笹(ささ)、片葉の松などがあり「産土(うぶすな)神が片葉のススキに乗って川を降(くだ)り当地に鎮まった」(長野県松本市の薄宮(すすきのみや)神社)などの伝説を全国各地に散見する。本来両葉(もろは)であるべき植物が片葉で雄々しく生きるさまに昔の人は神秘をみた、そして伝説が生まれた、とする説もあるが、はっきりしていない。[渡邊昭五]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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