物質構造科学研究所(読み)ブッシツコウゾウカガクケンキュウジョ

デジタル大辞泉 「物質構造科学研究所」の意味・読み・例文・類語

ぶっしつこうぞうかがく‐けんきゅうじょ〔ブツシツコウザウクワガクケンキウジヨ〕【物質構造科学研究所】

高エネルギー加速器による物質構造機能に関する実験的研究やこれに関連する理論的研究を行う大学共同利用機関高エネルギー加速器研究機構に所属。平成9年(1997)設立茨城県つくば市所在物構研IMSS(Institute of Materials Structure Science)。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「物質構造科学研究所」の意味・わかりやすい解説

物質構造科学研究所
ぶっしつこうぞうかがくけんきゅうしょ

国立大学法人法に基づいて設置された、大学共同利用機関法人エネルギー加速器研究機構(KEK(ケック))傘下の国立の研究所である。英語名はInstitute of Materials Structure Science。略称は物構研、IMSS。加速器を用いて物質の根源・構造・機能を解明するため、国内外の研究者の共同利用・共同研究を行うKEKの一研究所として、1997年(平成9)に設置された。所在地は茨城県つくば市。

 高エネルギー加速器とは、電子や陽子などの粒子を光の速度近くまで加速し、高いエネルギーの状態をつくりだす装置である。加速器から発生する放射光や陽電子、陽子加速器が生み出す中性子ミューオン(ミュオン)などの粒子を利用して、原子レベルから高分子生体分子レベルに至るまでの幅広いスケールの物質構造と機能を総合的に研究している。またビーム生成、利用技術などの研究を通して、幅広い物質科学の発展に貢献している。

 物質の性質の起源を知ることは、新しい機能性材料の開発に不可欠であり、生体を構成するタンパク質の構造解析は、新たな医薬品開発に役だてられている。二酸化炭素を排出しないエネルギーとして注目される太陽電池、燃料電池に使われる水素貯蔵合金材料の構造と機能の解明を行っているほか、宇宙空間で回収した微量の塵(ちり)の分析から地球・太陽系誕生の歴史にも迫っている。

 研究所には放射光科学研究系、中性子科学研究系、ミュオン科学研究系など研究手法ごとのグループのほかに、これらを横断的に活用する構造生物学研究センター、構造物性研究センター、計測システム開発室がある。

[馬場錬成・玉村 治 2018年7月20日]

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百科事典マイペディア 「物質構造科学研究所」の意味・わかりやすい解説

物質構造科学研究所【ぶっしつこうぞうかがくけんきゅうじょ】

大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構に所属する研究所の一つ。放射光や中性子,ミューオン(μ粒子)といったさまざまな粒子ビームを使い,物理学や化学,生物学,工学,医学,農学など幅広い研究を行っている。ビームの生成・利用技術などの開発を通して物質科学の研究にも貢献している。赤外・可視光,真空紫外線,X線の幅広い波長の電磁波で物質内の原子・分子の配列状態を調べる放射光科学,パルス中性子による基礎物理学,物性科学,生物科学,高分子化学に関して研究する中性子科学,プラスやマイナスの電荷を持っていて質量の重い粒子ミューオンを研究するミュオン科学の3研究施設がある。放射光科学第1,放射光科学第2,放射光源,中性子科学,ミュオン科学の各研究系がある。

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